ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例28】 事前確定届出給与の届出が遅れた場合
事例

当社(年1回3月決算)は、毎年6月末の定時株主総会直後の取締役会で、取締役の毎月の役員報酬と12月と翌年の6月の確定給与を支給する旨を決議し、確定給与については、事前確定届出給与の届出を適正に行なっています。
ところが当社の経理担当者が、本年の事前確定届出給与の届出期限の直前に交通事故に遭い入院してしまいました。その後、退院しましたが、事前確定届出給与の届出が済んでいないことがわかったのは、経理担当者が退院後に出社した後でした。その後、あわてて届出を行ないましたが、期限からは約1か月過ぎていました。
このような場合でも、事前確定届出給与として損金算入が認められるのでしょうか。

結論

経理担当者が重傷で届出について指示ができないなど、客観的にやむを得ない状態であれば、事前確定届出給与として認められます。

解説

法人税法施行令には、届出期限または変更届出期限までに事前確定届出給与の届出がなかった場合においても、その届出がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときは、届出期限または変更届出期限までにその届出があったものとして事前確定届出給与の規定を適用することができる、と規定されています(69条5項)。
この場合の「やむを得ない事情」とは、特に規定があるわけではありませんが、国税通則法基本通達が参考になると思われます。これによると国税通則法11条関係として「災害等による期限の延長」があり、その中で「災害その他やむを得ない理由」として、

(1) 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害

(2) 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通と絶その他の人為による異常な災害

(3) 申告等をする者の重傷病その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実

をあげています。
本事例の場合には、経理担当者が重傷で届出について指示ができない程度にあるならば、(3)に該当すると考えられますので、やむを得ない事情で遅れた旨の説明書を添えて所轄税務署長に提出すれば認められます。
ただし、たとえば、経理担当者の入院理由が骨折等であり、入院は必要であるが指示等をするのに特に問題がないような場合は、期限内に届出を済ませる必要があるかと思われます。