ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例26】 事前確定届出給与を支払わないこととした場合
事例

当社(年1回3月決算)は、6月末の定時株主総会直後の取締役会で、役員の毎月の役員報酬と12月と翌年の6月の確定給与を支給する旨を決議し、確定給与については、事前確定届出給与の届出を適正に行なっています。
しかし、当期の中間決算を行なったところ、予想以上に業績が悪いことが判明しました。そのため、本来であれば支給すべき確定給与を全額支給しないこととし、10月の取締役会で決議しました。
このように、事前確定届出給与の全額を支給しないこととした場合、税務上の問題が何かあるでしょうか。

結論

業績悪化改定事由に該当する場合には、社内で所定の手続きを経て事前確定届出給与に関する変更届出書と付表を提出することになります。しかし、この事例の場合、変更届出書等を提出しなくても、結果的に税務上の問題は起きません。

解説

この事例を図示すると、下図のようになります。
事前確定届出給与を支払わないこととした場合
この事例では、すでに決定済みであった事前確定届出給与が支給できないぐらいに業績が悪化していますので、業績悪化改定事由に該当すると仮定して説明します。
業績悪化改定事由に該当する出来事が発生し、事前確定届出給与を変更せざるを得ない場合、まずは変更する旨を株主総会等で決議する必要があります(本事例では取締役会で決議済み)。その後、変更の決議をした株主総会等から1か月を経過する日までに、事前確定届出給与に関する変更届出書(図A参照)と付表(変更後の事前確定届出給与等の状況、図B参照)を記入し、所轄税務署長に届け出ます。
仮に上記手続きを忘れてしまった場合、通常は事前確定届出給与として届け出た全額が損金不算入となります。しかし、この事例のように、事前確定届出給与として届け出た全額を支給しないのであれば、結果として損金不算入額はゼロとなり、結局のところ税務上の問題は特に何も起きません。
事前確定届出給与に関する変更届出書
付表 変更後の事前確定届出給与等の状況