ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例25】 翌期支給事前確定届出給与の未払計上
事例

当社(年1回3月決算)は、毎年6月末の定時株主総会直後の取締役会で、取締役の毎月の役員報酬と12月と翌年の6月の確定給与を支給する旨を決議し、確定給与については、事前確定届出給与の届出を適正に行なっています。
翌年6月に支給する確定給与について、12月の支給の翌日より決算日までと決算日の翌日から6月の支給日に分け、前者の部分を役員報酬の未払いとして毎年の決算で計上したいと思います。その際、この未払い部分について、税務上、損金算入は可能でしょうか。

結論

事前確定届出給与の期間按分による未払計上は認められません。

解説

この事例を図示すると、下図のようになります。
翌期支給事前確定届出給与の未払計上
会社法には、株式会社と役員の関係は、「委任に関する規定に従う」(330条)と定められています。
また民法では、受任者の報酬について、

(1) 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない

(2) 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない

(3) 期間によって報酬を定めたときは、その期間を経過した後に、請求することができる

と定めています(648条)。
つまり役員の報酬請求権は、委任された職務を終えた後でないと行使できず、報酬の支給日を定めた場合は、その支給日の到来をもって請求できるものといえます。
この規定をこの事例にあてはめた場合、翌年6月支給の事前確定届出給与について決算時に未払計上し、その時点での報酬額を確定させるという行為は、決算日時点で役員が会社からの委任事務を完全に履行したとはいえない状況のため、民法に違反する行為となってしまいます。
したがって、翌年6月支給の事前確定届出給与について、12月の支給の翌日より決算日までの部分を役員報酬の未払いとして、毎年の決算で計上すること自体ができないため、税務上の損金算入もできません。