ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例23】 届出金額と異なる報酬を支給した場合
事例

当社(年1回3月決算)は、平成23年5月の定時株主総会で、代表取締役小倉二郎の役員報酬を毎月50万円の定額給と6月10日と12月10日に各100万円上乗せして報酬を支払うことを決議し、事前確定届出給与の届出を適正に行ないました。
その後、6月支給分は届出どおりに支給しましたが、7月以降当社の業績が急激に悪化し12月支給分は50万円しか支給できそうにありません。届出どおりに支給しなかった場合、損金算入できないことは承知していますが、毎月支給している定期同額給与も損金不算入になるのでしょうか。

結論

実際に支給した事前確定届出給与分150万円(6月分の100万円および12月分の50万円)についてのみ損金不算入となり、定期同額給与(毎月50万円)は損金に算入されます。支給できない理由が業績悪化改定事由に該当するのであれば、事前確定届出給与に関する変更届出書と付表(変更後の事前確定届出給与等の状況)を所轄税務署長に提出することにより損金に算入することができます。

解説

この事例を図示すると下図のようになります。
届出金額と異なる報酬を支給した場合
現行の法人税法では、損金算入可能な役員報酬の類型として、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の3類型を規定し、それぞれの損金算入要件も厳格に規定し、その要件を満たさないものはその3類型ごとに損金不算入にするとされています。
したがって、この事例のように類型が異なる役員報酬が損金不算入となる場合でも、それだけの理由で他の類型の役員報酬が損金不算入になることはありません。
この事例では、12月支給分が、届け出た100万円の半分の50万円しか支給できないということですので、その50万円と6月に支給した100万円の合計150万円が損金不算入となります。定期同額給与である毎月50万円は、損金に算入されます。
ただし、12月の支給が届出の半額しかできないことが業績悪化改定事由に該当するのであれば、図Aの「事前確定届出給与に関する変更届出書」と図Bの「付表(変更後の事前確定届出給与等の状況)」を記入し、業績悪化改定事由によりその定めの内容の変更に関する株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日までに所轄税務署長に提出すれば、12月の50万円の支給についても損金に算入されます。
なお、業績悪化改定事由の詳しい内容は、事例15(業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合)を参照してください。
事前確定届出給与に関する変更届出書
付表 変更後の事前確定届出給与等の状況