ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例17】 業績の悪化による2回の減額改定が行なわれた場合
事例

当社(年1回3月決算)は、当期首より大幅に業績が悪化し、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営改善計画を策定し、8月に役員報酬の減額を決議しました。しかし、その後の業績が、経営改善計画で予想したもの以上に落ち込み、借入金の返済が困難になったため、取引銀行との間で借入金返済のリスケジュールの協議を行ない、その中で役員報酬の減額を求められたため、2月に再び役員報酬の減額を決議しました。
以上のような二度の減額改定を決議した場合において、当社の役員報酬は定期同額給与として扱われるでしょうか。

結論

定期同額給与として取り扱われます。

解説

この事例を図示すると下図のようになります。
業績の悪化による2回の減額改定が行なわれた場合
役員報酬の減額改定が事業年度中に二度あり、それが業績悪化改定事由に該当するかがポイントとなります。
まず、二度の減額改定の理由ですが、これはそれぞれが、事例15(業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合)の解説で示した「第三者である利害関係者」との関係での減額改定と認められるため、業績悪化改定事由に該当します。
また、役員報酬の減額改定が事業年度中に二度あったことについて、法人税法施行令69条1項1号では、定期同額給与に該当するための期間的な要件として、次の(1)~(4)の各支給時期における支給額が同額であることを求めています(下図参照)。

(1) 事業年度開始の日から事業年度終了の日までの間

(2) 事業年度開始の日から給与改定後の最初の支給時期の前日までの間

(3) 給与改定前の最後の支給時期の翌日から事業年度終了の日までの間

(4) 給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日までの間

この事例では上図に示したとおり、支給時期がA・B・Cの3つに分けられますが、

支給時期A(4月~7月)上記(2)に該当
支給時期B(8月~1月)上記(4)に該当
支給時期C(2月~3月)上記(3)に該当

と要件を満たしています。
つまり、定期同額給与に該当するための規定に反する部分がありません。したがって、定期同額給与として取り扱って差し支えありません。
定期同額給与として認められる「同額」である期間