ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例15】 業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合
事例

当社(年1回3月決算、非同族会社)は、通常、5月に開催される定時株主総会で役員報酬額を決定していますが、今期は上半期の業績が予想以上に悪化したため、10月に臨時株主総会を開催し、株主との関係上役員としての経営責任を取るため、役員報酬の減額を提案し決議しました。
この場合、減額前後の役員報酬は定期同額給与として扱われるでしょうか。

結論

定期同額給与として取り扱われます。

解説

予想以上に業績が悪化し、株主との関係上役員としての経営責任を取るための役員報酬の減額改定が、業績悪化改定事由に該当するかどうかがポイントとなります。
この点について国税庁は、平成20年12月発行の「役員給与に関するQ&A」で、「(業績悪化改定事由に該当するということは)経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになります」と解説し、業績悪化改定事由に該当する例として以下の3つをあげています。

(1) 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合(非同族会社が該当、同族会社でも該当する場合がないわけでもないが、そのような場合、客観的かつ特別な事情を具体的に説明できる必要あり)

(2) 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

(3) 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合(策定された計画が利害関係者から開示等の求めがあれば、応じられなければならない)

この事例は上記(1)に該当するため、業績悪化改定事由に該当し、定期同額給与として取り扱われます。
なお国税庁は、上記解説と同じ部分で、業績悪化改定事由について以下のとおりの補足的な説明をしています。

「(上記(1)~(3)の)3事例以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます。この場合にも、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります」
「なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しないことは言うまでもありません」

結局、業績悪化改定事由に該当するか否かのポイントは、第三者である利害関係者との関係上、役員報酬の額を減額せざるを得ない客観的で特別な事情があるかどうかであり、ある場合においても、その事情を具体的に説明できなければならないということになります。
このポイントを図示すると、下図のとおりになります。
業績悪化改定事由のポイント