ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例8】 期中の代表取締役交代に伴う役員報酬の改定
事例

当社(年1回3月決算)は、代表取締役に早急に治療を要する病が発見され、その治療に専念するために、9月末に臨時株主総会を開催し、代表取締役は退任しました。同時に取締役の長男を後任の代表取締役とする決議を採択しました。
この代表取締役の交代にあわせて、退任する代表取締役の報酬を月額50万円から20万円に、新任の代表取締役の報酬を月額30万円から50万円に変更する旨の決議も行ないました。この場合、当社の役員報酬は定期同額給与として扱われるでしょうか。ちなみに、本事業年度中の役員報酬は、この変更のみです。

結論

定期同額給与として取り扱われます。

解説

代表取締役の病気という事情により代表取締役が変更され、それとともに役員報酬が変更された事例です。定時株主総会での役員報酬の変更もないので、ここでの論点は、今回の変更が臨時改定事由に伴う変更に該当するかどうかという点に絞られます。
法人税法施行令69条1項1号ロの規定で、臨時改定事由の事例として、「役員の職制上の地位の変更」というのがあり、さらに、その具体例として法人税基本通達(下図参照)に、「例えば、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合」という規定があります。これらより類推すれば、この事例は臨時改定事由に該当し、定期同額給与になります。

■法人税法施行令69条1項1号

イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあっては、当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定(通常の改定)

ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(臨時改定事由による改定)

ハ 当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の減額改定(業績悪化改定事由による改定)

◆法人税基本通達による例示・説明

▼通常の改定が、「3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合」とは、例えば、次のような事情により定期給与後にされる場合をいう。

(1) 全国組織の協同組合連合会等でその役員が下部組織である協同組合等の役員から構成されるものであるため、当該協同組合等の定時総会の終了後でなければ当該協同組合連合会等の定時総会が開催できないこと

(2) 監督官庁の決算承認を要すること等のため、3 月経過日等後でなければ定時総会が開催できないこと

(3) 法人の役員給与の額がその親会社の役員給与の額を参酌して決定されるなどの常況にあるため、当該親会社の定時株主総会の終了後でなければ当該法人の役員の定期給与の額の改定に係る決議ができないこと

▼臨時改定事由による改定が、「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは、例えば、次のような事情によりされる場合をいう。

(1) 定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合

(2) 合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合
注)役員の職制上の地位とは、定款等の規定または総会もしくは取締役会の決議等により付与されたものをいう。

▼業績悪化改定事由による改定で、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれない。