ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例7】 増額改定決議と実施時期が異なる場合
事例

当社(年1回3月決算)は、業績が好調であることから、5月末の定時株主総会で、全役員の報酬を10万円ずつ増額する決議を行ないましたが、その決議では実施時期を10月支給分からとしました。
その後10月より、決議どおりの増額支給をしていますが、この場合、当社の役員報酬は定期同額給与として扱われるでしょうか。

結論

10月以降の増額部分(各役員60万円)に関しては、定期同額給与には該当せず、損金不算入となります。

解説

この事例を図示すると下図のようになります。
増額改定決議と実施時期が異なる場合
事例5(当期の初日に改定し、その後さらに改定した場合)の解説のとおり、役員報酬が定期同額給与に該当するための期間的要件は、

(1) 事業年度開始の日から事業年度終了の日までの間

(2) 事業年度開始の日から給与改定後の最初の支給時期の前日までの間

(3) 給与改定前の最後の支給時期の翌日から事業年度終了の日までの間

(4) 給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日までの間

の各支給時期における支給額が同額であることです(下図参照)。
この事例の場合、(3)の、給与改定前の最後の支給時期の翌日(6月)から事業年度終了の日(3月)までの間が、同額となっていない(10月より増額となっているため)ので、定期同額給与には該当しません。したがって、損金不算入額が発生します。
損金不算入額は、事業年度1年間の定額給に10月以降10万円が上乗せとなったと考えることができ、定額給の部分は定期同額給与と考えて差し支えありません。つまり、定額給部分からはみ出してしまっている毎月10万円が損金不算入額となり、改定のあった10月から期末の3月までの6か月間分、合計60万円(上図のグレー部分)が損金不算入となります。
定期同額給与として認められる「同額」である期間