ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例4】 期首に遡及して減額改定を行なった場合
事例

当社(年1回3月決算)は、毎年6月の定時株主総会直後の取締役会にて役員報酬の改定を行なっています。例年、期首に遡及して改定することはしていませんでしたが、前期末に大口取引先が経営不振に陥り、当社の売上も大きく落ち込むことが確実となったため、役員報酬を大幅に減額し、期首に遡って減額しました。そして、遡及改定に伴う減額部分(4月・5月分)相当額を各役員から返還させました。
この場合、役員報酬は定期同額給与として扱われるでしょうか。そのほか、税務上で注意すべきことはどのようなことでしょうか。

結論

定期同額給与として取り扱われますが、4月・5月の2か月に関しては、減額前の役員報酬額で計上するとともに、返還額を受贈益として計上する必要があります。

解説

この事例を図示すると下図のようになります。
期首に遡及して減額改定を行なった場合
この事例では、取締役会の決議により期首に遡って役員報酬を減額改定したわけですが、大口取引先の経営不振に伴う急激な自社の売上の減少という非常事態に際し、取締役会の決議により役員から私財の提供を受けたとも考えられます。このように考えると、この改定は、期首に遡らない減額改定と役員の私財提供のセットとみることになります。
役員報酬の減額改定については、当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにされた定期給与の額の改定という通常の改定の範囲内であり、定期同額給与として認められ、損金不算入額はありません。一方、役員の私財提供については、受贈益を計上することになります。
ちなみに私財の提供を行なった役員側の課税関係ですが、役員報酬の一部を返還したという行為は、(減額前の)適正な報酬額を受領した後、私財を提供したということになるため、この返還に伴い所得金額が減額されることはありません。