ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

【事例2】 複数回の改定が行なわれた場合
事例

当社(年1回3月決算)は、定時株主総会を5月25日に開催し、取締役Aの役員報酬を従来の40万円から60万円に増額する決議をしました。その後Aの統括する部署の業績が好調であることから、9月1日に臨時株主総会を開いて同月支給分の役員報酬から月額70万円に再増額することを決議しました。
この場合、定期同額給与の要件を満たさなくなり、損金不算入となる金額が発生することになるのでしょうか。もし、損金不算入額が発生する場合、その金額の算定はどのように行なえばよいのでしょうか。

結論

10万円(臨時株主総会で増額した金額)×7か月(臨時株主総会で増額された時から期末までの期間)=70万円
が損金不算入となります。

解説

この事例を図示すると下図のようになります。
複数回の改定が行なわれた場合
まず、9月1日の臨時株主総会で取締役Aの報酬を増額した理由である「Aの統括する部署の業績が好調である」というのは、法人税法施行令69条1項1号ロに規定する臨時改定事由には該当しません。したがって、9月支給分以降の役員報酬は定期同額給与には該当せず、損金不算入額が発生することになります。

■法人税法施行令69条1項1号

イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあっては、当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定(通常の改定)

ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(臨時改定事由による改定)

ハ 当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の減額改定(業績悪化改定事由による改定)

この場合の損金不算入額の計算方法ですが、まず、5月25日の定時株主総会での改定前40万円、改定後の60万円は、通常の改定として問題ありません。改定後の60万円が期末まで続けば、損金不算入額は発生しなかったわけですが、実際は9月に臨時の改定があり10万円の増額となりました。この場合、臨時増額前の報酬額(60万円)が9月以降も引き続き定期同額給与として支給されていたと考え、60万円からはみ出してしまっている毎月10万円が損金不算入額となります。したがって、臨時改定のあった9月から期末の3月までの7か月間分、合計70万円が損金不算入となります。
これを図示すると下図のようになります。
損金不算入額の算出