ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

定期同額給与に該当するか否かの判断方法は?
 定期同額給与に該当するかどうかは、5つの条件のいずれかに該当するかどうかで具体的に検討します。

使用人の夏と冬の賞与にあわせて、役員給与もその時季に支給額を多くする場合、定期同額給与には該当しなくなります。
特定の時期に支給額を増やしたり、まとめて支給したい場合は、定期同額給与でなく、事前確定届出給与にできないか検討します。
ここでは具体的な事例をあげて、定期同額給与に該当するかどうかを検討します。

<< 1.同額でない月がある場合 >>

まず事例1を検討します。7月と12月以外の月は、毎月30万円で同額なのですが、7月と12月だけは通常の月よりも30万円増額されているという例です。

このパターンは、一般の使用人と同様に、夏と冬に賞与が支給された場合をイメージしてください。この場合、定期同額給与に該当するでしょうか?
条件1~5のいずれかに該当するものが定期同額給与となりますので、それぞれ検討していきます。
(条件1)支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、支給額が同じ
(条件2)支給額の改定が会計期間開始後3か月以内
(条件3)役員の職制上の地位の変更等臨時の改定をした場合
(条件4)経営の著しい悪化により支給額を改定した場合
(条件5)毎月供与される一定の経済的利益
(条件1)は、(1)支給時期が1か月以下で、(2)支給額が同額というのがポイントです。この事例では、支給額は7月と12月が他の月と異なります。
ですから、(条件1)には該当しません。
(条件2)は、(1)会計期間開始の日から3か月以内に改定すること、(2)改定前、改定後はそれぞれ支給額が同額であることが必要です。この事例では、仮に6月に改定して、7月に支給額を増額した後、ずっと同額を支給すれば定期同額給与に該当しますが、8月以降また元の金額に戻しています。当然のことながら、2の条件は満たさないことになります。
(条件3)は役員の職制上の地位の変更等臨時の改定をした場合ですが、臨時の改定前は改定前で、改定後は改定後で、それぞれ同額であることが必要ですので、この事例には該当しないことになります。
(条件4)は経営状況の著しい悪化によって減額したケースですので、この事例には当てはまりません。
(条件5)は継続的な経済的利益ですが、この事例とは関係ありません。
したがって、この事例は条件1~5のいずれにも該当しないことがわかりますので、定期同額給与には該当しません。定期同額給与に該当しないということは、「事前確定届出給与」などに該当しない場合には、損金の額に算入しない部分が生じてしまいます。
具体的にいうと、7月に支給する60万円-30万円=30万円と、同じく12月に支給する60万円-30万円=30万円、合わせて60万円は損金の額には算入されません。

ただし、事前確定届出給与の要件を満たす場合には、損金の額に算入されることになります。ですから、何の届出もしていない場合には、この例のような7月・12月の増額部分は損金にはならないのです。

<< 2.1年に1回か2回にまとめて支給する場合 >>

次の例は、役員給与を毎月支給せず、ある期間分をまとめて、年1回または2回、所定の時期に支給するような場合です。この事例では、9月と3月にそれぞれ6か月分の給与を支給しています。

平成18年度法人税法の改正前はこれを賞与として取り扱うことをせずに、「他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの」として報酬として扱い、損金の額に算入されていました。つまり、それまでは、何の届出もせずに、この役員給与が損金の額に算入されていたのです。
同族会社以外の法人については、定期給与を支給しない役員に対して支給するこのような給与は届出不要で損金の額に算入されます。(平成19年度税制改正)
ですが、同族会社については、定期同額給与の条件1~5のいずれにも該当しないので、定期同額給与には該当せず、事前確定届出給与の対象とするための届出をしない限り損金不算入となります。
具体的に損金不算入となるのは、9月の60万円と3月の60万円の両方ともなります。


著者
望月 重樹(税理士)
2012年4月末現在の法令等に基づいています。