ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

事前確定届出給与の税務処理方法は?
 法人が役員に対して支払う給与が事前確定届出給与に該当するときは、全額損金の額に算入されるので、その要件をしっかり守るようにします。

実際の支給額が届出書より、多くても、少なくても、支給額全額が損金不算入となってしまいます。
届出書のとおりに支給できるように、業績見積もりをしっかり立てます。

<< 1.事前確定届出給与は全額損金算入できる >>

法人がその役員に対して支払う給与が事前確定届出給与に該当するときは、全額損金の額に算入されます。ただし、不相当に高額な部分については、損金の額に算入されません。
繰り返しになりますが、事前確定届出給与に該当するのが要件ですから、
(1)株主総会等で支給時期、支給額を定めること
(2)届出書を納税地の所轄税務署長に、期限までに届け出ること
(3)役員としての職務を執行すること
が必要となります。

<< 2.現物資産による支給の取扱い >>

事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給するということを事前に定めるものです。そのため、現物資産のような額の確定しないものは対象にはなりません。また、支給額の上限のみを定めたものや、ある一定の条件を付けることによって支給額が変動するような定め方をしたものも対象にはなりません。

<< 3.届け出た支給金額より実際の支給額が多い場合の取扱い >>

役員に実際に支給した金額が、事前確定届出給与として届け出た金額と異なる場合はどうなるのでしょう。この場合、その支給した金額全額が損金不算入となってしまいます。
たとえば、事前確定届出給与として、「支給時期平成××年7月10日 支給金額100万円」として届け出たとします。このときに130万円を支給した場合には、100万円を超える30万円が損金不算入とされるのではなく、130万円全額が損金不算入となってしまいます。
これは、事前確定届出給与が、支給時期と支給金額が事前に確定し、実際にその定めたとおりに支給されるものに限られるためです。所轄税務署長に届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたものとはいえないため、事前確定届出給与の対象から外れてしまうことになります。

<< 4.届け出た支給金額より実際の支給額が少ない場合の取扱い >>

では逆に、「支給金額100万円」と届け出ておいて、実際には80万円しか支給しなかった場合はどうなるでしょう。
届け出ておいた金額より少なく支給するのだったら問題ないのでは、と思われるかもしれません。ですが、この場合も多く支給した場合と同じです。届け出ておいた金額と異なる金額を実際に支給するということは、「額が確定していなかった」ものとされ、全額、つまり80万円が損金不算入とされます。

<< 5.業績見通しや計画が重要になる >>

事前確定届出給与の対象となるには、(1)株主総会決議をした日から1か月を経過する日と、(2)会計期間開始の日から4か月を経過する日のうち、いずれか早い日までに届出をしなければなりません。つまり、その会計期間が始まって遅くとも4か月以内に、今期の業績を見通して届出をしないといけないわけです。
とすると、「今期の業績なんかわからないし、役員のボーナスを多めに届け出ておいて、実際には資金繰りを考えて、あとで減らせばいいや」と考える人が増えるでしょう。
しかし、こういう方法は使えません。減額したら、減額した分だけでなくて、支給した全額を損金不算入として取り扱われてしまいます。

著者
望月 重樹(税理士)
2012年4月末現在の法令等に基づいています。