ビジネスわかったランド (経営・社長)

役員給与の実務処理と節税ポイント

定期同額給与のしくみはどうなっている?
 支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであり、支給額が同じ額であるものは定期同額給与とされます。

上記のほか、定期同額給与に該当するのは、支給額の改定など4つのパターンがあります。
定期同額給与に該当する場合には、基本的に全額を損金の額に算入できます。
定期同額給与というのは、役員に対して支給する給与で、次の5つの条件のうちのいずれかに該当するものをいいます。

<< 条件1.支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、支給額が同じ >>

定期同額給与とは、その役員給与の、(1)支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであり、(2)支給額が同じ額であるものをいいます。平成18年度の改正法人税法が施行される前に、損金として一般的に捉えられていた役員報酬で、1年間ずっと支給額が同じ給与のことです。
1年間ずっと金額が同じということは、途中で金額が変わったり、ある月だけ他の月と比較して、金額が多くなったり、少なくなったりしたものは、この条件1には含まれないということになります。

<< 条件2.支給額の改定が会計期間開始後3か月以内 >>

役員給与も経済情勢や会社の業績などの影響を受けて改定されることがあります。たいていは株主総会後に改定されます。
その際、支給額の改定が会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行なわれているという条件を満たすときに、改定前の各支給時期における支給額が同額であれば、その改定前の給与、また、改定以後の各支給時期における支給額が同額である場合には、その改定以後の給与が定期同額給与に該当します。
この条件2に該当するための第一のポイントは、会計期間開始の日から3か月以内に金額を改定することです。金額を改定するということは、会計期間開始の日から3か月目の役員給与から金額を変更するという意味ではなく、役員給与の金額変更を株主総会または取締役会によって決議するという意味です。この決議にしたがって、次の役員給与支払日から変更すればそれでよいことになります。

3月決算法人の事例の場合には、6月末までに役員報酬の金額変更を株主総会等で決議し、その結果を元に、7月の役員給与支払日から変更することになります。
この条件2に該当するための2つ目のポイントは、金額改定前の支給額は、他の改定前の月と比較して、毎月同額であるということ、そして、改定した後は、改定後の支給額が、改定後の他の月と比べて毎月同額であることです。
これらを満たすときに、条件2の場合として定期同額給与に該当することになります。

<< 条件3.役員の職制上の地位の変更等臨時の改定をした場合 >>

役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情(「臨時改定事由」という)によって給与の金額が改定された場合において、改定前の各支給時期における支給額が同額であれば、その改定前の給与、また、改定以後の各支給時期における支給額が同額である場合には、その改定以後の給与が定期同額給与に該当します。ただし、条件2の「支給額の改定が会計期間開始後3か月以内」に該当する場合は除かれます。
職制上の地位の変更というのは、代表取締役が取締役になったり、逆に取締役が代表取締役になったりするケースなどです。もちろん、それまで役員でなかった人が会計期間の途中で、取締役などの役員に昇格する場合も考えられます。職務の内容の重大な変更というのは、文字通り、取締役としての職務が大幅に変わったケースなどが想定されます。

<< 条件4.経営の著しい悪化により支給額を改定した場合 >>

経営状況が著しく悪化したことなど(「業績悪化改定事由」という)により、給与の額の改定がされた場合において、改定前の各支給時期における支給額が同額であれば、その改定前の給与、また、改定以後の各支給時期における支給額が同額である場合には、その改定以後の給与が定期同額給与に該当します。
経営状況が著しく悪化して、当初決定していた役員給与が支払われなくなるケースはよく見受けられます。このような事態は、当然、会計期間開始の日から3か月以内に起こるとは限りません。したがって、経営状況の著しい悪化のケースは条件2のケースと違って、会計期間開始の日から3か月という期間制限は設けられていません。
また、経営状況の著しい悪化を起因としていますので、役員給与の額を増額するようなケースはこのケースには、当然含まれません。
法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったケースなどのように、経営状況が悪化したとはいえ、「著しい悪化」までは至らないケースも、定期同額給与には該当しないことになります。


<< 条件5.毎月供与される一定の経済的利益 >>

継続的に役員に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当します。ここで経済的利益とは、社宅などの無償または低額の家賃や、金銭の無償または低利の貸付利息、保険料などが該当します。
これらについては、毎月経済的利益として給与課税される金額がほぼ一定であり、定期同額給与として扱って差しつかえないことから、定期同額給与の範囲に含め、法人の損金の額に算入されることになります。


<< 定期同額給与は基本的に全額を損金算入できる >>

定期同額給与とは、上記の条件1~5のいずれかに該当するものをいいます。この定期同額給与については、基本的に全額を損金の額に算入することができます。
「基本的に全額を」と表現したのは、定期同額給与に該当するもののうち、不相当に高額な部分の金額は過大であるとして損金の額には算入されないことになるからです。

著者
望月 重樹(税理士)
2012年4月末現在の法令等に基づいています。