ビジネスわかったランド (営業・販売)

顧客マネジメント

顧客情報の収集と活用の仕方は
 収集すべきは、“戦略的価値のある情報”である。顧客の販売企画を聞き、積極的に活用するのがポイントである。
また、活用に当たっては、得意先に役立つためには何をなすべきかを考える。

情報を素早くキャッチし、鋭く反応する
お客からどのような情報を集め、それをどのように活用するか―これによって、より深く相手に食い込むこともできるし、マイナス情報にも迅速に対処することが可能になる。
いずれにせよ、営業マンは、お客の内外における変化を逸早くキャッチし、それに鋭く反応しなければならない。
したがって、情報収集の中で重要なのは、戦略的価値のあるものということになる。営業マンが収集しなければならない“戦略的価値のある情報”とは次のようなものである。

ライバルの動き
得意先が併売店であれば、ライバルとの占有率競争にしのぎを削っている販売の最前線である。それだけに、ライバルの動きには敏感でなければならない。ライバルには多少なりとも隙があれば食い込むべきだ。
たとえば、
1.ライバル商品の在庫切れ、納期遅れ
2.ライバル商品が値上げしたとき
3.ライバル商品にクレームが発生したとき
4.ライバルの担当者が代わったとき
5.得意先とライバル担当者との間に問題が発生したとき

といった事項が見られたときは、まさに食い込むチャンスといえる。しかし、逆に、こちらが同様な事項を引き起こしたときは、反撃を受けることになる。

その他、ライバルが、
6.新製品を売り込んできたとき
7.値下げをしてきたとき
8.販売企画を提案してきたとき
9.占有率が徐々に増えてきたとき

というような不利な状況が発生したときは、いかに防戦するか、対抗策を逸早く打ち出さないと、ずるずるとライバルのペースにはまり込んでしまう。

顧客自身の動き
一方、顧客の側に次のような日常の経営や営業活動に変化があった場合には的確に把握して、その変化に順応するか、積極的に具体的な提案をするといった反応を示す必要がある。
1.基本的な経営戦略の決定や変更があるとき
2.人事に変化があるとき
3.販売企画(展示即売会やキャンペーン)を実施するとき
4.商品政策が変わったとき
会社あるいは上司の立場での対応を迫られることも多く、営業マンレベルでの対応がむずかしいこともある。が、顧客の販売企画には営業マンとしても積極的に参加していくべきであるし、顧客の取引先が倒産したといったときにはとくに注意を払う。

顧客の周辺の動き
顧客の立場を分析したとき、
1.大きな需要があるにもかかわらず、取引先顧客の占有率が低いとか、強力なライバルが参入していないときは、積極的な拠点づくりをしなければならない
2.自社の占有率が低い市場、あるいはほとんど自社商品が流れていない場合は、既存取引先の育成を図って地域ナンバー1に育て上げるか、拠点を増やしていく
といったことも行なう必要がある。このような形で情報を活用することが、実績向上につながるといってよい。

安定的な取引関係を樹立するためのポイント
取引先の立場になってみれば、たくさんの仕入先から絶えず売込みをかけられ、防戦一方といった状態なのである。しかも、売り込まれる商品は、メーカーは違っても、同一の商品であったり、性能的にも大差のない商品であったりといった具合である。
となると、仕入意欲は、価格が安いか、知名度が高いか、販売キャンペーン付きの商品か、強力な販売援助を伴った商品か、といった条件によって違ってくる。
つまり、商品に何らかの付加価値をつけて買っていただくというのが販売の基本でなければならない。もちろん、人間関係の絆の強さによって買ってもらうことも大切だが、最終的には仕入れた商品が売れるかどうかという決定的な要素がある以上、人間関係はベースとして必要であるが決め手とはならない。
したがって、人間関係づくりに留まらず、得意先に役立つためには何をなすべきか、というところまで入り込んでいくことになる。
そうした観点で、必須の項目を掲げたのが次の図表である。

これらの項目がほとんど実行されるようになれば、信頼関係はより強力なものになるとともに、営業マンの指導力が十分に発揮されることになる。
しかし、ほとんどの企業が、得意先との関係において、残念ながらこの段階までは至っていない。だが、営業マンはあくまでもこの10項目の実現に向けて努力しなければならない。
要するに、不安定な取引関係を何とか安定的取引関係にして、理想的には自動的に商品が流れるパイプづくりをするのが営業マンの役目である。とにかく、営業マンとして果たすべき方向をはっきりさせ、その方向に向かって日々の行動を積み重ねていくことが肝要である。
10項目が実行されるための前提条件は、当社との長い付合いの中で“信頼関係ができ上がっていること”、得意先の社長が当社の“商品開発や販売政策に賛同していること”にあるが、やはり営業マンの人柄や指導力がなければ、協力関係を樹立することはできない。

著者
内藤 和美(経営コンサルタント)
2004年11月末現在の法令等に基づいています。