ビジネスわかったランド (人事・労務)

募集・採用

採用は本人の適性・能力で判断する
採用する側の会社は、採用選考にあたり、(1)応募者の基本的人権を尊重すること、(2)応募者の適性・能力のみを基準として採用選考を行なうこと、の2点を基本的な考えとすることが求められている。

公正な採用選考を行なうとは、簡潔にいうと、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということである。したがって、会社側は、応募者の適性・能力に関係のない事柄については情報を収集しないようにすることが求められる。この点は、会社のイメージにも直結することであり、将来の採用活動にも影響を及ぼす可能性があるため軽視してはならない。

なお、求職者等から集めることが認められていない個人情報項目と具体的事項は、次のとおりである。
  1. 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項 ・家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取扱い等、会社が労務管理を適切に実施するために必要なものを除く) ・容姿、スリーサイズ等、差別的評価につながる情報
  2. 思想・信条
    ・人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
  3. 労働組合への加入状況
    ・労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
面接を行なう際にも、あらかじめ質問項目を厳格に定めておき、応募者の適性や能力に関係のない事項を尋ねないよう注意する必要がある。この点で、会社側としては、面接担当者への教育が重要となる。面接担当者は不要な情報を収集しないことを徹底するとともに、前述したように応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性・能力のみを基準として採用選考を行なう必要がある。
注意点!
採用選考時の身元調査については、本人の適性・能力を判断するうえで必要なものではなく、社会的差別の原因となる恐れもあるため、認められていない。違法な身元調査が行なわれ、悪質と判断された場合は、職業安定法に基づく改善命令が出されることがある。

なお、一定規模以上の事業所(東京都では、常時50人以上の従業員を雇用する企業。詳細は各都道府県労働局に確認のこと)では、「公正採用選考人権啓発推進員」(以下、「推進員」という)の設置が求められている。この制度は、一定規模以上の事業所で推進員を設置し、この推進員に研修等を行なって適正な採用選考システムの確立を図るとともに、推進員が中心となって、会社内において人権研修の計画・実施等を推進することを目的としている。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。