ビジネスわかったランド (人事・労務)

募集・採用

個人情報の取扱いには細心の注意を払う
従業員を募集する際には、個人情報の取扱いには細心の注意を払う必要がある。

募集・採用の際に、個人情報の取扱いについて遵守すべきルールは次のとおりである。
  1. 利用目的を明示する
    応募者から履歴書等の個人情報を集める際は、その個人情報の利用目的を明らかにしなければならない。
    具体的には、「当社の募集に応じた応募者の提出する書類は、採用選考のためにのみ使用します」というように、応募者に対して、利用目的を書面等で明示する必要がある。応募に関する提出書類の一覧に記載するなど、本人に確実に利用目的が伝わることが大切である。
  2. 利用は明示した利用目的の範囲内に限られる
    応募者から得た個人情報は、取得時に明示した利用目的の範囲内でのみ利用できる。たとえば、新たな利用目的(今後の採用計画を立案するための統計資料として用いたいなど)が発生した場合は、改めて本人の同意を得る必要がある。
  3. 適切に書類の返却・廃棄等を行なう
    履歴書等の応募書類、個人情報など、採用活動上、不要となったものについては、写しも含め、適切かつ確実に返却、破棄、削除を行なう。もし、返却等をしない場合は、目的外の利用が許されないことを踏まえて、適切に管理しなければならない。
特に、不採用者の応募書類については、採用者と比較すると管理がおざなりになる傾向がある。管理の不備から個人情報が流出すると、損害賠償等を求められる可能性も否定できず、企業イメージを損ねる恐れもあるため、あらかじめ取扱いのルールを定めておくことが大切である。
注意点!
応募者に健康診断書を提出させることについては、慎重を期す必要がある。

採用選考時の健康診断については、「採用選考時に健康診断を実施することは、応募者の適性と能力の判断に必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながる恐れがある。健康診断を実施する場合には、応募者の適性と能力を判断するうえで健康診断が真に必要かどうか慎重に検討する必要がある」という旨の行政通達が出されている。

したがって、入社を希望する者の従事する業務などを考慮して、必要性がなければ省略することが望ましい。

なお、労働安全衛生規則第43条は、常時使用する従業員を雇い入れる際は、医師による健康診断を行なわなければならない旨を規定しているが、これは採用選考時の健康診断を義務づけたものではなく、採用決定後の適正配置等のための健康診断について定めたものであることに注意が必要である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。