ビジネスわかったランド (総務・庶務)
取締役会の運営
取締役会の決議方法は?
取締役会の決議
取締役会の決議は、議決権を行使できる取締役の過半数が出席し(定足数)、出席した取締役の過半数が賛成した場合に成立する。
決議事項について特別利害関係のある取締役は、定足数を割り出すための取締役の数にも加えず、議決権の行使もできない。
特別利害関係は、次のような場合の該当取締役に認められる。
・代表取締役の解職決議
・競業取引の承認決議
・利益相反取引の承認決議
・会社に対する責任を一部免除する決議
・譲渡制限株式の譲渡承認決議
・取締役と会社との間の訴えにおける会社代表者を定める決議
代理出席・書面の提出
では、取締役が取締役会に代理人を出席させたり、自分の意見を書面で取締役会に伝えた場合、出席者と認めることはできるか。
取締役会は、取締役それぞれの知識・経験を結集させることが期待されているので、信任を受けた取締役自身が討議に参加することが必要であり、代理人による出席はできない。
同様に、取締役が、出席に代えて自分の意見を記載した書面を提出しても、討議を尽くしたとはいえないから、取締役会に出席したことにはならない。
持回り決議
議案を各取締役のもとに順次回覧させることにより、賛否の意見を集約する方法を、いわゆる持回り決議という。
これまで持回り決議は認められていなかったが、会社法では、定款に定めを置くことにより、議決に加わることのできる取締役全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をすれば当該議案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができるようになった。
ただし、監査役設置会社においては、監査役が異議を述べたときはこの方法によることはできない。
電話やテレビ電話による決議
近時の通信技術の発達は著しいものがあり、多数の者が電話で対話することや、相互に相手の表情をテレビ画面で見ながら対話することも可能となっている。
したがって、現に会議が開催され、出席者が現実に一堂に会するのと同様に意思疎通が可能であるなど一定の要件を満たせば、これらの通信手段により取締役会に出席したものと取り扱うことができる。
なお、会議の場にいない取締役等が取締役会に出席した場合には、議事録に出席方法を記載する。
可否同数のときは議長が決する旨の規定の効力
取締役会の決議の方法に関して、定款や取締役会規則で、可否同数のときには、議長が決定するという規定を設けることができるかが問題となる。
たとえば、国会の両院議長の場合には、議事に際して「可否同数のときは、議長の決するところによる」と定められ、議長に決裁権が与えられている。
しかし、両院の議長の場合には、公平の観点から、議長の職務執行中は議員としての表決に加わらない慣行がある。
したがって、可否同数のときに初めて表決権を行使するという制度に合理性がある、と考えることができる。
これに対して、取締役会の議長の場合には、すでに取締役として決議に参加しており、さらに可否同数の場合に決裁権をもつとすれば、実質的には二度の表決権を有することになる。
言いかえれば、出席取締役の人数は変わらないのに、投票数が1票増えることにより、過半数で決するという要件が軽減される結果となるのである。
しかし会社法は、定款で取締役会の決議の要件を加重することを認める一方で、逆に要件を軽減することはできないとしている。
議長に、このような決裁権を認めることは、取締役会決議の要件を軽減することにもなり、会社法の規定に違反することになるので、議長に決裁権を付与するような規定を設けることはできないのである。
ただし、取締役会決議で可否同数となったところで、議長に裁決を一任するという提案が賛成多数で可決されたような場合は、議長裁決によって可決してもよいと考えられる。
著者
安部井 上(弁護士)
2011年8月末現在の法令等に基づいています。
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