ビジネスわかったランド (総務・庶務)

取締役会の運営

取締役会議事録のつくり方と手続きは?

取締役会議事録の作成者
取締役会における議事については議事録をつくらなければならない。この作成を怠った場合については、100万円以下の過料に処せられる。
この議事録を誰が作成すべきかについては、会社法もはっきり定めていない。作成者というのは作成作業者ではなく、議事録の作成について最終的な責任をもつ者という意味である。
これについては、取締役会の議長という見解と、代表取締役であるという見解とが対立しているが、通常は代表取締役が議長を務める場合がほとんどなので、あまり問題は生じない。

議事録の作成時期
いつまでに議事録を作成しなければならないかについても、はっきりした定めはない。しかし、議事録の性格からいっても、取締役会が終了した後に、事務的な書面の作成と取締役(監査役)の署名を得るのに必要な期間を基準として、これを大幅に遅れることはできない。

議事録の記載事項
具体的な議事録の作成にあたっては、記載例を参照していただきたい。



まず形式的な記載事項として、次の5つが挙げられる。
(1)取締役会を開催した日時・場所
(2)出席した取締役、監査役等の氏名
(3)その場にいない取締役等が出席した場合の出席方法
(4)議長がいる時は議長の氏名
(5) 特別取締役による取締役会であったり、通常の招集手続きではなく法定の方法による場合はその旨
さらに、議事録の実質的な中身として記載が必要なものは、次の2つである。
(1)「議事の経過の要領」
(2)「議事の結果」

取締役の署名の方法と不備
議事録には出席した取締役が署名する。署名の場合には捺印を欠いても有効だが、捺印するのが通例である。署名に代えて記名・捺印でもよい。使用する印鑑は認め印でも差し支えないとされている。ただし、代表取締役の変更登記や不動産登記等の関係で実印(と印鑑証明書)が求められる場合はある。
監査役が取締役会に出席した場合には、議事録に出席者として記載し、その署名ないしは記名捺印をする。ただし、会計監査限定監査役は取締役会に出席しない。なお、電磁的記録で作成した場合については書名に代わる措置が定められている。

署名を欠く場合
取締役や監査役の署名がない場合には、議事録の効力はどうなるか。たとえば、一部の取締役が議事録への署名を拒否しているような場合である。
このような場合でも、議事録の効力は失われないと考える。議事録は実際になされた取締役会の記録として、後々の証拠とするために残しておくものであり、その記載が事実どおりであるならば、たとえ一部の取締役の署名が欠けていても、効力を否定する必要はないからである。

「議事の経過の要領」の記載方法
議事録の中身のうち、「議事の経過の要領」の記載方法については次のとおり。
「議事の経過」とは、開会、提案、討議、表決の方法、閉会などの会議の経過全般がこれに含まれる。「要領」で足りるから、出席者の発言をすべてそのまま記載する必要はない。
したがって、質疑応答や討議がなされずに、スムーズに決議に至ったような場合には「議長より次のとおり諮ったところ、全員異議なく承認可決された」などと記載すればよい。
しかし、実質的な質疑応答や討議が行なわれた場合には、後に、どのようにして決議に至ったかがわかるように、発言者や発言の内容の要旨なども記載する必要がある。


著者
安部井 上(弁護士)
2011年8月末現在の法令等に基づいています。