ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

つい、使ってしまう、ちょっとおかしな表現

「確認」という言葉の意味を確認すべし

「確認」の乱用に注意する

(1) ~かどうか確認したいのですが
(2) それについてはちょっと確認させてください
(3) お支払いの確認ができました
(1)と(2)は、ある記者会見でのやりとりです。(1)は記者の質問、(2)はそれへの返答です。双方が「確認」したがっていますが、やさしい日本語に直せば、(1)は「~ですか」もしくは「~かどうか教えてください」、(2)は「わかりません」ということです。「確認する」が婉曲表現として用いられていますが、ストレートに質問しない記者、率直に答えない会見者、という印象は否めません。

記者の質問のパターンとしては、ほかに、「~という認識でよろしいでしょうか」「~ということでよろしいでしょうか」というのもあります。これらも、「~ですか」の一言で済みますが、低姿勢であることを示すのが目的なのか、このような遠回しな言い方をしています。

(2)は、会見中に何度も使われました。「わかりません」と答えたとしても、そこにはさまざまなニュアンスがありますが、会見者の「それについてはちょっと確認させてください」には、「即答できない」「即答しづらい」「答えたくない」「答える気は毛頭ない」などの意味が込められていると想像できます。「早速調べて、わかり次第回答する」という意思表示の場合もあると思いますが、「調べる気はあまりない」と受け取れることもあり、「確認」の乱用には誠実さが感じられません。

(3)は、電話口で先方が私に言った言葉です。すでに支払った代金の催促通知が来たので手紙を書き送ったところ、数日後に電話がかかってきました。確認とは読んで字のごとく、確かにそうだと認めることですから、電話の主の「確認」の使い方は、単語の意味だけ考えれば間違っていません。

けれども、誤って催促通知を送りつけた相手に向かって、「支払いの確認ができた」と言うのは、少々配慮が足りません。確認作業をするのは当然のことで、その結果支払いがなされていたことが判明したわけですが、それをそのままの言葉で客に告げるものではありません。「すでにお支払いいただいておりましたのに、大変失礼いたしました」と言えばよく、「確認した」などとわざわざ言う必要はないのです。

外国人学習者用に編まれた『日本語を学ぶ人の辞典』(新潮社)には、「確認」を使った例文として、「品物を確認したうえで代金を払う」「身分証明書で人物を確認する」が挙げられています。これらの例は、「訪問の日程を確認する」「事実関係を確認する」などと異なり、確認される側に人間が関わっています。その場合、確認する側のほうがどうしても強い立場になります。

辞書の例文で明らかなように、品物を確認する客がいて、品物を送る側つまり確認される側がいれば、客のほうが上に立ちます。身分証明書を基に本人であるかどうか確かめる人は、確かめられる人よりも上に位置することになります。

「あなたが支払ったことを確認した」と上からものを言うのは、ミスを犯した側のすることではありません。確認という言葉を安易に用いるのは考えものです。

野口 恵子(文教大学非常勤講師)