ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)
つい、使ってしまう、ちょっとおかしな表現
「~かなあと思います」「~というふうに思います」では、意思は伝わらない
決意表明などでの過度の婉曲表現は、誠意が感じられず、ごまかしに聞こえることもある
(1) これはいいことなのかなあと思います
(2) 今日はインドの話をしようかなあというふうに思います
(3) お詫びしたいというふうに思います
(4) それについては今後しっかりと調べさせていただきたいと、このように考えているところであります
「これはいいことなのだと思います」「これはいいことだと思います」と言えば誤解は生まれません。また、「これはとてもいいことです」のように、「思う」も省いて、自分の意見をきっぱり表明してもよかったのです。
このコメンテーターは普段から、「~かなあと思います」「~かなあというふうに思います」という文末を好み、(2)の「今日はインドの話をしようかなあというふうに思います」もこの人の言葉です。「今日はインドの話をします」とはっきり言って何の問題もないし、「今日はインドの話をしようと思います」と言えば、少しやわらかくなります。
現実のコミュニケーションの場面では、あまりはっきり言いたくない、言えない、断言するとキツい印象を与える、自信過剰に聞こえる、という配慮が働いて婉曲な言い方をすることはよくありますが、それも、時と場合によりけりです。ぼかした言い方が本当に必要なのか、言葉を発する前に考えてみたほうがよいでしょう。「~かなあと思います」ばかり使っていると、(1)のような紛らわしい発言になってしまう恐れがあります。
(3)は不祥事を起こした企業のトップが謝罪会見で述べた言葉です。以前から、「お詫びしたいと思います」という表現はよく耳にしました。「~たい」と願望し、さらに「思う」を付け足して曖昧にしているということで、「思っているだけなのか」「単なる希望的観測か」と非難を浴びていました。「お詫びしたいというふうに思います」となると、あまりにもぼかされた「謝罪表現」に、詫びる意思など実はないのではないかと疑いたくなります。「申し訳ありませんでした」と言わない理由は何なのでしょうか。
(4)は政治家の言葉です。本人の与り知らぬところで行われたという事務所の不正行為が明るみに出ての会見。「しっかりと調べさせていただきたいと、このように考えているところであります」というのは、「しっかりと調べたいというふうに思います」と言い換えることもできます。いずれにせよ、「しっかり調べます」と力強く約束するのを巧妙に避けています。しっかり調べる気が本当にあるのか、と聞いているほうは疑わしく思うものです。
決意表明や、真摯に語ろうという場面では、過度の婉曲表現は禁物です。たとえ話し手にその気がなくても、誠意が感じられなかったり、ごまかしているように聞こえたりするからです。
冒頭の例は次のように直すことができます。
(1) これはいいことだと思います
(2) 今日はインドの話をします
(3) お詫びします
(4) それについてはしっかり調べます
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