ビジネスをはじめいろいろな案内状や招待状には、「万障お繰り合わせのうえ……」という表現がよく使われています。
古くから、ビジネスの世界ではこの「万障お繰り合わせ」は決まり文句として一般的に使われていますが、人によってはこの表現を失礼だと不快に感じることがあります。
というのは、この「万障お繰り合わせ」には、「何をさしおいても、とにかく来てもらいたい！」という押しつけがましいニュアンスがあるからです。
ですから、社会的地位の高い人などに送付する場合には「ご来臨くださいますようお願い申し上げます」と、心からお願いするといった表現のほうがマナーにかなっているといえます。
ところで、この「万障お繰り合わせ」のあとに、「必着」とよく書かれています。「○月○日必着で……」と、です。
この「必着」もまた「必ず着くようにせよ」と命令しているのと同じです。また、案内状や招待状を受け取った人にも都合があります。
不快に思われる表現は変えて「○月○日までに御返事いただけますよう、お願い申し上げます」などとしてほしいものです。
慣用的に使われている言葉でも、相手によって、とりわけお客様には使っていいかどうか慎重に検討することも必要なのです。


白沢節子