ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)
しきたりがわかれば書ける「文章」のルール
ビジネスでの手紙の書き方・10のルール
いざ、仕事の手紙となると、いったいどのように書けばいいのかわからない人が少なくありません。
プライベートな手紙と違って、自分流でいいというわけにはいかないのです。
そこで、いくつかの注意点と基本的な書き方についてあげてみましょう。
(1)「前略」のあとはすぐ用件に入る
手紙は、原則として「前文、主文、末文」から成り立っています。ふつう前文は「頭語」「時候の挨拶」「安否の挨拶」で構成され、この前文のあと、主文に入ります。
頭語は、「拝啓」「謹啓」「拝復」(返事や回答を出すときの頭語)「前略」などが一般的によく用いられていますが、「前略」とした場合は、あとに続く時候や安否などの挨拶は略します。
したがって、「前略、春暖の候……」「前略、時下ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。○○様はじめ課内の皆さまお元気でご活躍のことと思います……」などと書く必要はないのです。
もし、このように書きたければ、「前略」とはせずに、「拝啓」「謹啓」などの頭語を使います。
「前略」とは読んで字のごとく、前文を略す、つまり「急ぎの用件のため、いっさいの挨拶を勝手ながら省略させていただきます」という意味を含んでの頭語です。
ですから、「前略」のあとはすぐ用件に入ります。このようなことから、とても実用的でビジネス文書向きの頭語が「前略」なのです。
(2)「頭語」と「結語」は対応させる
「結語」は、手紙を前文から主文、そして末文で締めくくるときの最終の部分です。
前文に頭語と挨拶があるように、末文でも結びの挨拶、すなわち用件を結ぶ挨拶、相手の健康を祈る挨拶、乱筆乱文を詫びる挨拶、激励の挨拶などがあって、最後に頭語の対応として結語を使うのです。
結語には「敬具」「草々」「敬白」などがありますが、注意しなければならないのは、。頭語と結語は決まった組み合わせがあることです。
・一般的に広く使う…拝啓 → 敬具
・あらたまった場合に使う…謹啓 → 敬具・敬白
・返信に使う…拝復 → 敬具
・前文を省略するときに使う…前略 → 草々
「前略」という頭語ではじめたら「敬具」で結ぶのは間違いであり、逆に「拝啓」に「草々」も間違っています。
また、せっかく頭語をきちんと書きながら、結語を忘れてしまう人もいるので注意してください。
(3) 時候の挨拶に迷ったら「時下」にする
手紙を書くときには、時候の挨拶がなかなか浮かばないので、それだけでも書くのが面倒になるという人がいます。
「○月にふさわしい時候の挨拶は何だったかな」「会社宛の挨拶はどう書けばカッコつくだろうか」などと悩むわけです。
そこで、もしもここでつまずくようなら時候の挨拶は省略して「時下」としても差し支えありません。
「時下、ますますご清栄の段ご同慶に存じます」
「時下、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます」
としても失礼になりません。「時下」とは、「このごろ」「ただいま」「昨今」という意味で、とても便利な言葉といえます。
(4) 主文に移るときは「さて」「このたび」などで始める
前文から主文(手紙を書いた目的や動機になる中心部分)に移るときは、文章を滑らかにしたり、ここから大切なことなのでよく読んでくださいという意味で、
「さて」「ところで」「このたび」「つきましては」「さっそくですが」
などがよく使われます。
このように「さて」「ところで」「さっそくですが」と始めるときは、行を改めることが必要です。改行することで視覚的にも相手は読みやすくなります。
たとえば、
「拝啓 時下、ますます……とお慶び申し上げます。
さっそくですが、○○につきまして……」
と、このようになります。
(5)「貴」「御」は行の最後に書かない
手紙は内容や言葉遣いがきちんとしていればそれでいいかというと、けっしてそんなことはありません。
気配りならぬ“字配り”が大切です。
字配りに注意するとはどういうことかというと、先方にかかる言葉が2行にまたがらないようにするということです。
たとえば、「貴社」や「御健勝」の「貴」や「御」が行の最後になっていて、「社」や「健勝」が次の行のはじめにきて割れてしまっているような場合、これでは敬称を使った意味がありません。
こういう書き方をすると、その人や会社のレベルを問われます。
同様に「お願い申し上げます」という文章が、「お願」で切れて「い申し上げます」が次の行にきているようでは、お願いする意思や気持ちは本当はあまりないのでは……、と受け取られてもしかたありません。
文章の流れで、「お願い申し上げます」が行の最後のほうにきてしまい、1行に全部書くだけのスペースがなければ、そこは空白にして次の行から書けばいいのです。
こうしたミスに気がつかないで、というより、そこまで気を配ることができないようではビジネスパーソンとして失格です。
(6) 接頭語の「御」は、「ご」「お」に置き換える
入社したての社員が最も手っ取り早い敬語法として身につけるのが、接頭語の「御」でしょう。
この「御」は、ほとんどどんな単語にもつけることができますから、会話だけでなく、ビジネス文書にもよく使います。
たとえば、お客様に出す年賀状には、「旧年中は格別の御厚情、御支援を賜り、心から御礼申し上げます」ではじまり、「皆様の御健勝と御繁栄を御祈りして年頭の御挨拶といたします」で結ばれているものも珍しくありません。
しかし、さして長くもない文章にこれだけ「御」が入ると、堅苦しいだけでなく仰仰しい印象を相手に与えます。ビジネス文書に「御」は不可欠にしても、乱用は控えたいものです。
もし使うのであれば、慣用化された最小限の範囲内にして、「ご」「お」とひらがなで書いたほうが堅苦しさも、うっとうしさも緩和されます。「ご多忙」「ご案内」「お喜び」「お願い」というようにすれば、見た目もすっきりします。
ところで、「お」と「ご」の使い分けですが、これには大まかな原則があります。基本的には「お」は訓読みに、「ご」は音読みにつけます。「お心配り」「ご心配」などがその例です。
こうした慣用的な使い方を日ごろから覚えておくことも、社会人にとって忘れてならないことです。
(7) 仕事上の手紙には個人的なことは書かない
公私の別をきちんと分けることは、できるビジネスパーソンに求められるマナーの一つです。
たとえば、お客様としばらく一緒に仕事をしていると個人的にも親しくなることがあります。だからといって「○○さんが大変なようだから、今度の無理な条件は飲んであげよう」などと、仕事に個人的な感情を持ち込むのは禁物です。そんなことをすれば、たちまちビジネスパーソンとして失格の烙印を押されてしまいます。
ビジネス文書でも、これに似た失敗が起こることがあります。
宛名の相手と面識がある場合、そっけない文章では何だか失礼だと思うのか、親しみを込めて自分の個人的なことまで書いてしまう人がいます。
「時下、ますますご健勝のことと存じます。私も昨年40代になり、相変わらず元気にやっております。以前、お会いして以来……」
ビジネス文書で相手が知りたいのは、発信者の個人的なことではなく用件そのものです。こんな公私混同をしているようでは、ビジネス感覚のない人と思われてもしかたありません。
(8)「殿」は目上に書くと失礼になる
手紙の場合、敬称のつけ方がわからなくて困るといった人がいます。なかには、目上の人にはすべて「殿」と書くべきだと思い込んでいる人もいるようですが、これは間違いです。
原則的には、次のように覚えておくといいでしょう。
・会社や部署には「御中」。たとえば「株式会社○○商事 御中」「○○課 御中」
・職名(専務取締役、○○部長、○○課長など)には「殿」。たとえば「人事部長殿」
・個人宛は「様」
・対象が多く、同文のときは「各位」。たとえば「株主各位」
・恩師、教育者、医師、議員には「先生」
「殿」は本来、目下の人への敬称です。ですから、目上の役職者の場合は「部長○○○○様」と書くといいでしょう。
一般的にはすべての人への敬称である「様」は、目上、目下、男女、親疎にかかわらず使っていいのです。
(9) ハガキは8~10行に収まるようにする
ハガキは、その内容が第三者の目に触れるだけに、人に見られてもいいものや、ごく簡単な用件を伝える場合に用いられます。ですから、ハガキは封書に比べて少々くだけています。
そのためビジネスでは、簡単な通知でも、ちょっとあらたまった場合には封書で出すのが常識で、ハガキを用いる機会は案外少ないものです。とはいえ、ハガキを出すこともあるので書き方を心得ておく必要があります。
ハガキの書き方については、とくにこうしなければならないという形式はありませんが、一つ注意することがあります。便箋と違って罫線が引いてないので、字配りに気を使うことです(罫線入りのハガキも売っています)。
よく考えないで書き出すと、最初は大きな文字だったのがスペースがなくなって次第に小さな文字になったり、後半が白く空いてしまうなど、全体のバランスが崩れ、見た目の悪いものになってしまいがちです。そうなると体裁が悪いだけでなく、書いた人の常識まで疑われます。
一般に、読みやすいハガキとは、8行から10行程度と考えてください。このことを頭に入れておくと、文字の大きさや行間なども見当がついてスッキリした感じになるはずです。
(10) 返信用の宛名の「行」は消して「様」「御中」に
返信用のハガキや封書に書く自分の氏名には、「様」ではなく「行」をつけるのが普通です。
そして返信用を使って返事を出すときは、相手の氏名の下の「行」を二本線(斜線)で消して、個人なら「様」、会社・団体なら「御中」と敬称を改めてつけます。
また、返信用の裏側に、自分の住所・氏名を書く場所として「御住所」「御芳名」などと印刷されてあるときは、「御」「御芳」の敬称はやはり二本線で消します。
なかでも意外と多い間違いが、「芳」をそのまま残してしまうことです。これでは自分で自分に敬称をつけていることになってしまいます。
さらに会合の出欠の返事などで、「御出席」「御欠席」として、「どちらかに○をおつけください(どちらかをお消しください)」とあったときは、不要なほうをやはり二本線で消します。
ただし、この場合、出席のときは「喜んで(出席)させていただきます」、欠席のときは「あいにく先約があり(欠席)させていただきます」などの短文を書き添える心遣いがほしいものです。
また、残すほう(たとえば「御出席」の場合)の「御」を消すことは言うまでもありません。
白沢節子
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