ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

「人間関係」がうまくいく言葉のルール

お客様の意図がわからないときは質問形式で

お客様がいろいろと話されることに対して、何を言いたいのか、何をたずねたいのか、正しく把握できないことがあります。
一例をとってお話ししてみましょう。以前、お客様が私どもに次のように電話で話されました。

「そちら様では社員教育をされていますね。実はわが社に新人が入ってきまして、半年近くになるのに職業人の意識が希薄なのか、新人研修のやり方がよくなかったのかわからないのですが、なかなか成長しなくて困っています。一日も早く戦力になってもらいたいと思っているのですが……。新人が半年経ってもあまり成長がないということは、もしかしたら新人を指導する先輩にも問題があるのかもしれませんが、わが社では新人も先輩も十分な研修をしていないのが現状でして……」

私はお客様の話を聞いても、電話による相談事なのか、新人または先輩の教育するための研修の問い合わせなのか、あるいは彼らに役立つ書籍の問い合わせなのか、正直言ってよくわかりませんでした。
だからといって「何をおっしゃりたいのかわかりませんので、もう少し要領よく話していただけませんか」とは失礼で言えるものではありません。
人によっては「話が見えないのですが」と言う人もいますが、それも大変に失礼なことです。話し方のまずさをはっきり指摘したのですから。
そこで、私は話の感じから研修の問い合わせではないかと思いましたので、「研修のお問い合わせでございますか」とたずねました。
「ええ、そうです」と言われたので、今度は「対象は新人、先輩のどちらでいらっしゃいますか」と聞き返しました。
すると、「新人と先輩を別々に研修するだけの予算がないのですが、どちらか一方だけをするとしたら、どちらが効果がありますか」と言われました。私は「新人が成長するのもしないのも、先輩の指導力がモノをいいますから、先輩の研修をなされたらいかがでしょう」と答えたのです。
お客様が「社員研修についておたずねします。対象は新人、あるいは先輩ですが、どちらかを一日研修したいと思います。実は新人の成長が……、どちらを研修したほうが効果的でしょうか」と要領よく話してくださればよかったのですが、そうではなかったので、私のほうから質問しながら意図をつかんでいくしかなかったのです。
しかし、勝手にこうだろうと推察すると間違いが起こることもあります。
お客様の意図を正しく把握するのは、簡単なようで実はとてもむずかしいものです。お客様とのあいだでトラブルが生じるのも、相手の真意を正しく把握していなかったことが原因だったというのはよくあることです。
お客様を一方的に悪く言うより、把握のしかたを身につけていない自分を反省するくらいの姿勢でいてほしいと思います。


白沢節子