ビジネスわかったランド (税務)

事業承継税制

相続時精算課税制度の適用範囲の拡大

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度は、贈与をした年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母から、贈与を受けた年の1月1日で20歳以上の推定相続人である子または孫に財産を生前贈与した場合に選択できるものである。
いったん制度の適用を選択すると、対象の贈与者から贈与を受ける財産については、以後すべてこの制度が適用され、暦年課税に変更することはできない(年110万円の基礎控除も受けられない)。

この制度には2,500万円の特別控除があり、相続前に行なった2,500万円までの贈与には贈与税がかからない。2,500万円を超える部分に対しては一律20%が課されるが、最終的には相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額をもとに計算した相続税額から精算される。

2017年度の改正内容

2017年度税制改正により、贈与税の納税猶予の適用対象となる贈与に、相続時精算課税制度に係るものが追加され、併用が可能となった。

いったん贈与税の納税猶予の適用を受けても、その後、適用(認定)が取り消された場合には、高額の贈与税の負担が発生するリスクがある。
その点、相続時精算課税制度と併用することができれば、納税猶予の適用(認定)が取り消された場合でも税負担は相続税と同額になるため、万一の際のリスクを軽減することができる。

この改正は、事業承継への早期の取り組みと贈与税の納税猶予の利用促進を図ったものといえる。

2018年度の改正内容

相続時精算課税制度は、前記のとおり、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人である子または孫に財産を生前贈与した場合に選択することができる。

2018年度税制改正により、事業承継税制の特例措置の適用を受ける場合の相続時精算課税の適用範囲が拡大され、60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者(受贈者)への贈与も対象となった。
つまり、一定の要件はあるものの、贈与者の推定相続人である子や孫ではない者に対する贈与も対象になったということである。

相続時精算課税の適用範囲が拡大されたことで、納税猶予取消し時のリスクがより軽減されることになった。

なお、一般措置については、引き続き60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人である子または孫に対するものが対象とされている。
●一般措置の適用対象(従来どおり)

60歳以上の父母、祖父母

20歳以上の推定相続人である子または孫

●特例措置の適用対象(改正点)

60歳以上の贈与者

20歳以上の後継者(受贈者)

※2018年5月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています