ビジネスわかったランド (税務)

税額計算と申告

所得税額控除

(1)制度概要

法人が利子や配当等の支払いを受ける際に源泉徴収される所得税および復興特別所得税(以下、「所得税等」という)の額は、各事業年度の所得に対する法人税額から控除することができる。

(2)控除することができる金額

1.全額控除ができるもの

以下に掲げるものの支払いを受ける際に源泉徴収される所得税等の額は、全額控除することができる。

・預貯金の利子
・公社債の利子
・合同運用信託の収益の分配
・公社債投資信託の収益の分配
・みなし配当
・匿名組合契約に基づく利益の分配


2.元本所有期間に応じて控除できるもの

以下に掲げるものの支払いを受ける際に源泉徴収される所得税等の額は、元本所有期間に応じて控除することができる。
 

・剰余金の配当(資本剰余金の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く)、利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く)、剰余金の分配(みなし配当を除く)

・集団投資信託(合同運用信託・公社債投資信託等を除く)の収益の分配

(3)所有期間対応部分の計算方法

上記(2)2「元本所有期間に応じて控除できるもの」の、所有期間対応部分の計算方法には、以下の2つの方法があり、事業年度ごとにいずれかを選択することができる。

1.原則法

元本の銘柄ごと、かつ、所有期間の月数ごとに、次の算式により計算する。

控除の対象となる所得税等の額

配当等に係る所得税等の額

×

分母の期間のうち、元本所有期間の月数
配当等の計算期間の月数

2.簡便法

配当等の元本を、(1)株式および出資、(2)集団投資信託の受益権、の2種類に区分し、かつ、配当等の計算期間が1年を超えるものと1年以内のものとに区分して、その区分に属するすべての元本について、その銘柄ごとに次の算式により計算する。

a)配当等の計算期間が1年以内のもの

控除の対象となる所得税等の額

配当等に係る所得税等の額

×

A+(B-A)×1/2
B

b)配当等の計算期間が1年を超えるもの

控除の対象となる所得税等の額

配当等に係る所得税等の額

×

A+(B-A)×1/12
B

※A:配当等の計算の基礎となる期間の開始時に所有していた元本の数
※B:配当等の計算の基礎となる期間の終了時に所有していた元本の数

(4)未収の利子配当等に係る所得税等の取り扱い

法人が、各事業年度終了の日までに支払を受けていない利子・配当等(※)について、その事業年度の確定した決算において収益として計上した場合は、その未収計上した事業年度において所得税額控除の適用を受けることができる。

※「利子」は、その事業年度終了の日までにその利払期の到来しているものに限る。「配当」は、その支払いのために通常要する期間内に支払いを受けることが見込まれるものに限る

(5)適用要件

所得税等の控除の適用を受けるためには、確定申告書等に控除を受けようとする金額およびその計算に関する明細の記載が必要となる。

(6)損金算入との選択

所得税等の控除を受けた場合は、その所得税等の額は、損金の額に算入されない。すなわち、所得税等の額を損金算入するか、税額控除を受けるかは、選択適用となる。

(7)所得税額等の還付

控除する所得税等の額が、その事業年度の法人税額より多い場合には、その控除しきれなかった金額は還付される。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています