ビジネスわかったランド (税務)

減価償却

ソフトウェア特有の論点

(1)自社開発ソフトウェアの取得価額

自社開発のソフトウェアの取得価額は、制作のために要した原材料費・労務費・経費の額と事業供用費の合計額となる。ただし、そのソフトウェアが市場販売目的か自社利用目的かで、取得価額に含まれる範囲が以下のように異なる。
  1. 市場販売目的のソフトウェアの場合

    自社開発のソフトウェアのうち市場販売目的のものの開発費用は、以下のように処理する。この処理は、会計と税務とで乖離が生じることはない。 (a) 最初に製品化された製品マスターの完成までに要した費用・・・研究開発費(b) 最初に製品化された製品マスターが完成してから、複写可能な最終的な製品マスター完成までに要する費用
    ・・・取得価額(著しい改良に要した費用は研究開発費)
  2. 自社利用目的のソフトウェアの場合

    自社利用目的のソフトウェアの開発費用については、会計と税務で処理基準が一部異なる。以下の表のとおり、そのソフトウェアの利用による将来の収益獲得または費用削減が不明の場合は、会計は費用処理、税務は資産計上することとされているため、この部分の費用については別表調整が必要となる。
      会計 税務
    そのソフトウエアの利用による、将来の収益獲得、または費用削減効果が・・・ 確実であると認められる場合 資産計上 資産計上
    不明の場合 費用処理
    明らかに認められない場合 費用処理

(2)自社開発ソフトウェアを事業の用に供した日

ソフトウェアも減価償却資産の一種であるから、事業の用に供した時から減価償却が可能になる。ソフトウェアは目に見えない資産であることから、何らかの方法により事業供用日を明確にする必要がある。販売用ソフトウェアの原本ならばリリース時、自社利用ソフトウェアであれば社内で利用を開始した時が事業供用の時と判断できるであろう。これらの事実は、対外的なリリースを示すパンフレットなどの広告宣伝用の資料や社内稟議資料等で明確にする必要があるといえる。

なお税務上の償却期間は、販売用ソフトウェアの原本は3年、自社利用ソフトウェアは5年と定められている。会計上、販売用ソフトウェアを見込販売数量に基づき償却している場合は、会計上の償却費が税務上の償却限度額を超過することが多いと考えられるため、法人税別表において調整が必要である。

(3)ホームページ製作費用

ホームページの製作に係る費用は、原則として発生時に損金の額に算入することができるが、その使用期間が1年を超える場合には、その使用期間に応じて均等償却をすることが求められる。

ただし、ホームページ内にプログラムの製作費用がある場合には、ソフトウェアとして資産計上し、5年間で減価償却を行う必要がある。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています