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租税公課その他

短期前払費用

(1)前払費用の定義と損金算入時期の原則

前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、支出した事業年度終了の時において、未だ提供を受けていない役務に対応するものをいう。たとえば、3月決算法人が、20×1年10月から20×2年9月分までの12か月分の保険料を20×1年10月に支払った場合、20×2年3月期末では、20×2年4月分以降の保険料が前払費用となる。

前払費用は、原則として役務の提供を受ける期間の経過に応じて損金の額に算入する。

(2)損金算入時期の特例

前払費用の額のうち、支払った日から1年以内に役務の提供を受けるもの(短期前払費用)については、継続適用を要件に、支払った日の属する事業年度の損金の額に算入する処理も認められている。これは、企業会計上の重要性の原則に基づく経理処理を税務上も容認するものであり、支払った日から短期間に役務の提供を受ける前払費用については、厳密に繰延べ処理をすることなく、支払った時点での損金算入を認めるものである。

短期前払費用の対象となる費用としては、支払利息・保険料・使用料・家賃・賃借料などが挙げられ、一般的には、一定のサービスを継続的に受ける役務提供の対価が対象とされる。ただし、収益とのひも付きから対応関係が重要視されるものや、原価を構成するようなものには、短期前払費用の適用はない。たとえば、借入金を預貯金や有価証券に運用して収益を得る場合など、借入金と収益とがひも付きの関係にある場合は、収益との対応を重視し、その支払利息は短期前払費用として取り扱うことはできないこととされている。

短期前払費用の取扱いは、継続適用が要件となっている。利益操作とみなされないためには、自社の費用計上の方針を経理規程に定めるなどして、毎期継続して適用することが重要である。

なお、役務の提供の対価が短期前払費用の対象であるから、物品を継続して購入するための対価には、そもそも適用がないことに留意する必要がある。

(3)「1年以内に役務の提供を受けるもの」の意味

3月決算法人が、事務所賃借料を支払うケースで検討する。
  1. 20×1年3月末に翌4月分の賃借料を支払う支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものに該当し、継続適用を要件に、20×1年3月期に損金算入が可能。
  2. 20×1年3月末に20×1年4月から20×2年3月までの1年分の賃借料を支払う支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものに該当し、継続適用を要件に、20×1年3月期に損金算入が可能。
  3. 20×1年3月末に20×1年5月から20×2年4月までの1年分の賃借料を支払う支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものに該当しないため、原則どおり、時の経過に応じで損金の額に算入する。
  4. 20×1年9月末に、20×1年10月から2年分の賃借料を支払う支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものに該当しないため、原則どおり、時の経過に応じて損金の額に算入する。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています