ビジネスわかったランド (税務)

繰延資産

実務上誤りやすい繰延資産

(1)敷金・保証金のうち返還されない部分

敷金や保証金のうち、退去時に返還されない部分の金額は税務上の繰延資産に該当する。敷金等は、建物を賃借するために支出する権利金等に含まれ、償却期間は5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときは、その賃借期間)となる。

実務上は、返還されない部分も敷金保証金として資産計上している処理や、返還されない部分の全額を支出時の損金としている誤りが多く見受けられる。

また、消費税の取扱いについても注意を要する。敷金等のうち返還される部分は消費税の不課税取引に該当するが、返還されない部分(繰延資産に該当する部分)は、敷金等の支出の目的となった賃借物の家賃の一部として課非判定を行う。

すなわち、社宅の賃借に係る敷金等であれば非課税取引となる。事務所用建物の賃借に係る敷金等であれば課税取引となり、支出時に仕入税額控除が可能である。賃貸借契約書上、敷金等は「税抜賃料の○か月分」と記載されることが多く、消費税の控除ができないものと判断されやすいため、注意が必要である。

(2)分割払いの繰延資産

フランチャイズに加盟する際に、ノウハウ提供料・経営指導料などの名目で一時金を支払うことがある。これらの一時金のうち将来返還されないことが確定しているものは、「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」として税務上の繰延資産に該当することになる。この一時金はノウハウの頭金として、償却期間は5年(契約期間が5年未満で契約更新の際に再び一時金の支払いを要する場合は契約期間)となる。

この一時金は一般に高額になることが多く、数年にわたる分割払いとされることもある。3年を超える分割払いの場合には、金額が確定している場合でも、未払いの金額を繰延資産として計上して償却を行うことはできない。支出の都度繰延資産に計上し、支出のタイミングが異なるものごとに償却計算を行うことに注意が必要である。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています