ビジネスわかったランド (税務)

減価償却

資本的支出と修繕費

(1)資本的支出と修繕費の基本的考え方

固定資産の修理、改良等の名目で支出した金額は、固定資産の取得価額に加算される「資本的支出」と、その事業年度で一時の損金となる「修繕費」に区分される。

資本的支出と修繕費の基本的な考え方は、以下のとおりである。
支出の内容 区分 取扱い
固定資産の使用可能期間の延長または価額の増加をもたらす支出 資本的支出 固定資産として資産計上し、減価償却を行なう
固定資産の通常の維持管理および原状回復のため等の支出 修繕費 支出事業年度で一時の損金

(2)資本的支出と修繕費の具体例

資本的支出と修繕費の具体例を挙げると、以下のとおりである。
支出の内容 資本的支出 修繕費
建物の避難階段の取付  
用途変更のための改装  
建物の外壁塗装 元の材質よりも高級素材を使用した塗装  
汚れやひび割れ等の劣化を元に戻すための塗装  
老朽化による防水効果が薄れたための防水塗装
(従前と同程度の材質を使用)
 
雨漏り防止のための新たな防水塗装  
機械・器具の部品交換 品質や性能の高い部品への交換  
劣化による部品交換(交換前と同程度の性能)  
ソフトウェア 新たな機能の追加、向上等仕様の大幅な変更  
バグ取り費用、デザイン変更費用、毎月の保守料  
ウイルス除去ソフトの導入費用  
ウイルスの被害復旧費用  

(3)資本的支出と修繕費の判定の形式基準

実務上は、その支出が資本的支出に該当するのか、修繕費に該当するのかの判定に困難を伴うケースも多い。そこで、判定を簡便化するため、以下に掲げるような形式基準を設けている。
  支出額による判定(1) 修理・改良の周期による判定 実質判定の可否 被災資産か否か 支出額による判定(2) 区分経理の有無による判定 判定
一の固定資産について、一の計画に基づいて行う修理・改良 20万円未満       修繕費
20万円以上 おおむね3年以内     
上記以外 実質判定で修繕費   
実質判定不能な支出 災害により被害を受けた資産以外の資産に係る支出 支出額が60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下  
上記以外 支出額の30%と前期末取得価額の10%とのいずれか少ない金額を修繕費として経理している場合(継続適用)
上記以外の金額 資本的支出
災害により被害を受けた資産に係る支出 支出金額の30%相当額を修繕費として経理している場合 修繕費
上記以外の金額 資本的支出
実質判定で資本的支出   

なお、修理・改良のために要した金額が20万円未満の場合や、修理・改良がおおむね3年以内の周期で行なわれることが明らかな場合を除き、上記の形式基準による判定は、その支出が資本的支出か修繕費か明らかでない場合に限り認められることに注意が必要である。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています