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繰延資産

繰延資産の償却

(1)繰延資産の償却

繰延資産は、損金経理を要件に、償却限度額以下の金額を損金の額に算入することができる。

(2)償却限度額

繰延資産ごとの償却期間、および償却限度額は、以下の表のとおりである。
繰延資産の種類 償却期間 償却限度額
企業会計上の繰延資産 株式交付費・社債発行費・創立費・開業費・開発費 任意償却(損金経理を要件に一時の損金とすることが可能) 繰延資産の額-過年度の償却額
公共的施設の設置または改良のために支出する費用 (1)負担した者に専ら使用されるもの その施設等の耐用年数の7/10に相当する年数  繰延資産の額

×

その事業年度の月数
償却期間の月数

 
(2)(1)以外の施設等の設置または改良 その施設等の耐用年数の4/10に相当する年数 
共同的施設の設置または改良のために支出する費用 (1)その負担者または構成員の共同の用に供されるもの、または、協会等の本来の用に供されるもの 施設の建設または改良に充てられる部分の負担金⇒その施設の耐用年数の7/10に相当する年数 
土地の取得に充てられる部分の負担金⇒45年
(2)商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるもの 5年(その施設の耐用年数が5年未満である場合⇒その耐用年数)
建物を賃借するために支出する権利金等 (1)建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等の額がその建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつその建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるもの その建物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2)建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等により、その明渡しに際して借家権として転売できることになっているもの その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
(3)(1)および(2)以外の権利金等 5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときは、その賃借期間)
電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用   その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるとき⇒その賃借期間)
ノウハウの頭金等   5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金または頭金の支払いを要することが明らかであるとき⇒その有効期間の年数)
広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用   その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるとき⇒5年)
スキー場のゲレンデ整備費用   12年
出版権の設定の対価   設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合⇒3年)
同業者団体等の加入金   5年
職業運動選手等の契約金等   契約期間(契約期間の定めがない場合⇒3年)
上記以外の繰延資産は、支出の効果の及ぶ期間で均等償却を行う。支出の効果の及ぶ期間は、以下の期間を基礎として適正に見積もることとされている。
  1. 固定資産を利用するために支出したもの
    ⇒その固定資産の耐用年数を基礎として算定した期間
  2. 一定の契約をするために支出したもの
    ⇒契約期間を基礎として算定した期間

(3)20万円未満の繰延資産の償却限度額

支出した金額が20万円未満の繰延資産については、損金経理を要件として一時の損金として処理することが認められている。20万円未満の判定上は、繰延資産の内容によりその判定単位が下記の表のとおり定められている。
繰延資産の種類 20万円未満の判定基準
自己が便益を受ける公共的施設または共同的施設の設置または改良のために支出する費用 一の設置計画または改良計画につき支出する金額(2回以上に分割して支出する場合には、その支出する時において見積られる支出金額の合計額)
資産を賃借しまたは使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用 契約ごとに支出する金額
役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用 支出の対象となる資産の1個または1組ごとに支出する金額

(4)別表の添付

その事業年度において繰延資産の償却費として損金経理をした金額がある場合には、償却限度額その他償却費の計算に関する明細書(別表16(6))を確定申告書に添付しなければならない。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています