ビジネスわかったランド (税務)

有価証券

有価証券を譲渡した場合

(1)譲渡損益の認識

有価証券を譲渡した場合には、原則として契約日(約定日)の属する事業年度に譲渡損益(譲渡対価の額-譲渡原価の額)を認識する。この場合における約定日とは、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に掲げる日とされている。実際に有価証券を引渡した日ではないことに注意が必要である。
また、保有する株式等の発行法人につき組織再編成(合併、分割、株式交換、株式移転)がある場合には、法人税法上、その保有株式を譲渡したものとして取り扱われる。
取引の形態 約定日
証券業者等へ売却の媒介等を委託している場合 取引成立日
相対取引の場合 相対取引の約定日
保有する株式等の発行法人が合併した場合 合併の効力発生日(新設合併の場合は、新設合併設立法人の設立登記日)
保有する株式等の発行法人が分割型分割をした場合 分割の効力発生日(新設分割の場合は、新設分割設立法人の設立登記日)
株式交換または株式移転の場合 株式交換の効力発生日または株式移転完全親法人の設立登記日

(2)譲渡対価の額

譲渡対価の額は原則として、その譲渡が行なわれたときのその株式等の時価とされる。ただし、次に掲げる場合には、それぞれに掲げる額が譲渡対価の額となる。

1.みなし配当事由による譲渡の場合

交付を受けた金銭等の額からみなし配当の額を控除した金額⇒この場合には相手方からその金額の通知が行なわれる。

2.一定の組織再編成等の場合

譲渡直前の帳簿価額⇒結果的に譲渡損益は認識されず、繰り延べられることとなる(新株式の譲渡時に旧株式分の譲渡損益を認識する)。

(3)譲渡原価の額

1.算定方法

譲渡原価の額は、その譲渡した有価証券の一単位当たりの帳簿価額の金額に、譲渡した有価証券の数を乗じて算出する。一単位あたりの帳簿価額は、「1.有価証券の範囲と区分」に掲げる区分ごとに、かつ、その銘柄を同じくするものごとに、移動平均法または総平均法により算出する。
算出方法 内容
移動平均法 有価証券をその銘柄の異なるごとに区別し、銘柄を同じくする有価証券を取得する都度その有価証券の取得の直前の帳簿価額と取得した有価証券の取得価額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもって一単位当たりの帳簿価額とする方法
総平均法 有価証券をその銘柄の異なるごとに区別し、その銘柄の同じものについて、事業年度開始のときにおいて有していた有価証券の帳簿価額とその事業年度において取得した有価証券の取得価額の総額との合計額を、これらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもって一単位当たりの帳簿価額とする方法
2.一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出

イ)取得時

法人が有価証券を新たに取得した場合には、一定の事由に該当する場合を除き、取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限(仮決算による中間申告書を提出する場合には、その中間申告書の提出期限)までに、有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法を書面により納税地の所轄税務署長に届け出る必要がある。

届出がなかった場合には、法人税法上は移動平均法により算出することが強制されるが、会計上の算出方法と税務上の算出方法が異なる場合は、譲渡損益の金額が会計上と税務上で異なることになるため、別表調整が必要となる。


ロ)算出方法の変更

法人がその算出方法を変更する場合には、変更する事業年度開始の日の前日(前事業年度末)までに納税地の所轄税務署長に承認申請書を提出し、その承認を受けなければならない。
上記イ)は、税務署長の承認は必要なく届け出た方法により算出することが認められるが、その後の変更は税務署長の承認が必要となり、勝手に変更することは許されない。変更しようとする算出方法では適正な計算は行なわれないと判断されたときや、現状の算出方法の採用後3年間経過していないときなどは、その変更承認申請が却下されることもあるため、承認の有無を必ず確認する必要がある。
なお、変更しようとする事業年度終了の日までに税務署長から承認または却下の処分がないときは、その日において承認されたものとされる。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています