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繰延資産

繰延資産と前払費用の違い

(1)前払費用とは

前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、支出した事業年度終了の時において、いまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。

(2)繰延資産と前払費用の違い

繰延資産は「すでに提供を受けた役務に対する対価」であるのに対し、前払費用は「未だ提供を受けていない役務に対する対価」であるところが決定的な相違点である。そのため、法人税法上および消費税法上、以下の表のとおり取扱いが異なる。
  前払費用 繰延資産
定義 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価
(企業会計原則注解5)
すでに代価の支払が完了しまたは支払い義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用
(企業会計原則注解15)
法人税法上の
取扱い
役務提供を受けた時の(=時の経過に応じて)損金となる。 効果の及ぶ期間で償却することにより損金算入する。
法人税申告書に別表16(6)「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」の添付が必要。
消費税法上の
取扱い
役務提供を受けた時の(=時の経過に応じて)課税仕入となる。 役務提供を受けた時の(=繰延資産計上時の)課税仕入となる。
税抜経理の場合の貸借対照表上の金額 税込金額となる。 税抜金額となる。
税務上の繰延資産は、貸借対照表上「長期前払費用」として計上されることが多い。そのため、「長期前払費用」勘定のなかには、税務上の繰延資産と、前払費用のうち期末日の翌日から起算して1年を超える期間を経て費用となるものが混在することになる。その結果、繰延資産と前払費用の取扱いを混同している誤りが散見されるため、注意が必要である。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています