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グループ法人税制

グループ法人税制の概要
グループ法人税制とは、完全支配関係(100%資本関係)があるグループ内の法人間で行なわれた取引について損益を生じさせることなく、各会社の所得を計算しようとするものであり、その内容は次のとおりとなる。
この取扱いは強制適用であり、法人による任意適用ではないことに注意が必要である。
制度 内容 完全支配関係の判定時期
譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べ・戻入れ

●内国法人が譲渡損益調整資産を、完全支配関係のある他の内国法人に譲渡した場合には、譲渡法人において、その譲渡損益は損金・益金に算入せずに、いったん繰延処理。

●譲渡損益の繰延処理後、譲受法人において一定事由が発生した場合には、譲渡法人において、譲渡損益額の戻入処理。

取引時
寄附金の損金不算入
受贈益の益金不算入
内国法人が、完全支配関係(法人による完全支配関係に限る)のある他の内国法人に寄附をした場合には、支出法人において全額損金不算入、受領法人において全額益金不算入となる。
適格現物分配 完全支配関係のある内国法人に対し、適格現物分配を行なった場合には、帳簿価額による譲渡をしたものとして、譲渡損益を認識しない。
発行法人への株式譲渡等 完全支配関係のある法人に対し、その法人の株式を譲渡した場合等、みなし配当が生ずる事由により金銭等の交付を受けた場合には、譲渡損益は認識しない。
完全子法人株式等に係る受取配当等の益金不算入 完全子法人株式等に係る配当金については、配当金の益金不算入額の計算上、負債利子の控除はせずに、受け取った配当金全額が益金不算入となる。 配当等の計算期間の開始日から末日まで
中小法人向け特例の不適用 資本金5億円以上の法人による完全支配関係のある法人については、資本金1億円以下の法人に認められている中小法人等の特例措置の適用はない。 中小法人等の事業年度末
子会社の清算 完全支配関係のある子法人が清算した場合の親法人の取扱いは次のようになる。
●子法人株式消滅損益は認識しない。
●子法人の未処理欠損金額を引継ぐ。
残余財産確定時
上記の制度は完全支配関係のある内国法人間で行なう取引につき適用されるものであり、完全支配関係のある内国法人と外国法人の間で行なう取引については適用されない。ただし、中小法人向け特例の不適用に関しては資本金5億円以上の外国親会社に100%支配されている内国法人も対象となる。

また、グループ法人税制が適用される完全支配関係の判定は、上記表に掲げる時期に行なうことになる。たとえば、期中において同一の子会社に対し数回の寄附を行なった場合、その寄附を行なったときごとに完全支配関係を有するか否かの判定を行なう。その結果、同一の子会社であっても期中にその子会社株式の一部をグループ外に譲渡した場合などは、最初の寄附はグループ法人税制の適用を受けるが、2回目の寄附はグループ法人税制の適用を受けないことも考えられる。

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています