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税務調査

税務調査の概要

(1)税務調査の目的

国税である法人税や消費税、地方税である法人住民税、法人事業税などの税目では申告納税方式が採用されており、納税者が自ら課税標準額、納税額を計算して税務署や各地方自治体に申告し、その申告した金額を納付する仕組みとなっている。納税者が法令に従い、適正に申告することが大前提であるものの、計算上の単純ミス、法令上の適用ミス、解釈誤りによる申告漏れが発生することもある。

税金は法令の定めに従って広く公平に負担されるべきものであり、申告漏れを見過ごすことになると申告納税方式の根幹を揺るがす事態にもなりかねないため、納税者の申告が適正に行われているかどうか、税務調査が行われる。

(2)税務調査を行う人

法人税や消費税、所得税などの国税については、全国を12の地域に分けて各国税局が管轄し、さらに各国税局ごとに住所や本店所在地などに応じて税務署が管轄している。法人の場合、原則的には本店所在地が納税地となり、その納税地を管轄する税務署に対し申告を行うことになるため、所轄税務署が税務調査を行う。ただし、国際税務などの専門的分野については、所轄税務署以外の専門職員が調査官として訪れることもある。

なお、取引規模や資産規模が一定以上の大規模法人については、所轄税務署ではなく、各国税局が税務調査を行うことになる。

地方税は、各地方公共団体が税務調査を行うが、法人住民税や事業税の場合、国税の行う法人税の調査に伴い、課税所得等の修正が行われることが多く、外形標準課税を除き、各地方公共団体が独自に税務調査を行うことはほとんどないと思われる。

(3)税務調査の種類

税務調査は、大きく強制調査と任意調査に分かれる。

強制調査は、悪質と認められる脱税案件の場合に、国税局査察部(マルサ)によって行われるものであり、裁判所の捜査令状に基づく調査である。一方、強制調査以外の通常行われる税務調査は、納税者の同意を得て行われる任意調査とされる。

(4)調査会社の選定

通常行われる法人の税務調査の場合、一般的には3年から5年の周期で行われることが多いが、必ずしも定期的に行われることが決まっているわけではない。設立以来、1度も税務調査が行われたことがない法人があることも事実である。

法人から提出された確定申告書、決算書、事業概況説明書などの資料の数値と税務署が収集したデータ(過去データや同業他社データなど)を比較、検討したうえで調査対象が選定される。調査対象になりやすい法人は次のとおりである。

□売上規模が大きい会社
□売上が急激に増加している会社
□売上の伸びに比べ、所得が少ない会社
□規模の拡大が売上に反映していない会社
□人件費に大きな変動がある会社
□原価が急激に増加している会社
□役員報酬が高額過ぎる会社
□同業他社と利益率に差がある会社
□資産に大きな増減がある会社 など

(5)調査対象となる税目

法人の税務調査の場合、メインは法人税となるが、消費税、源泉所得税、印紙税についても一緒に調査される。

赤字会社に対する調査では、税務調査の結果、赤字であることに変わりがなく、法人税の追徴課税が生じない場合もあるため、実務上は調査の頻度が少なくなる傾向にあるが、売上計上漏れや費用の過大計上など、調査によって赤字から黒字になり、法人税が追徴課税されるケースもある。

また、消費税、印紙税、源泉所得税は、利益ではなく各取引に対して課される税金であるため、1件でも誤りが見つかれば追徴となってしまう。

(6)税務調査の流れ

税務調査が行われる場合、一般的には次のような流れとなる。

税務署から調査実施の連絡

調査対象期、調査時期について税務署から電話連絡

 

税務調査の事前準備

調査対象期の資料準備、確認、税理士との打合せ

 

税務調査当日

調査官が来社し、帳簿確認、ヒアリングなどをもとに申告内容の調査

 

税務調査終了

修正なし または 修正申告等を行ない、追徴税額および附帯税を納付

著者: あいわ税理士法人
http://www.aiwa-tax.or.jp/

※2022年6月1日現在の法令、ガイドライン等に基づいています