ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営計画の立て方・進め方

他社がマネできない独自の戦略は何か?
本項では、この事業が成功する中核となる独自の戦略(=クリティカル・コア)についてアピールします。これは、いわばラーメン屋さんの秘伝のタレとも言うべき、戦略の中核部分ですから、本来なら第三者に公開すべきではないかもしれません。
しかし、上司や金融機関の担当者に、なぜこの事業が成功するかを理解してもらうためには、この部分をオープンにして説明するのが、最も効果的です。

他社にとってはリスクにもなるクリティカル・コア

クリティカル・コアについて触れた書籍としては、楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)が有名です。
楠木氏はクリティカル・コアの条件として、次の2点をあげています。
(1) 持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素であること
(2) 一見して非合理であること
(1)は、競合他社が参入してきて、市場が競争状態に陥った場合でも、依然として競争優位性を保てるような戦略でなければならない、ということです。
(2)については、これが最も特徴的な点ですが、他社から見たら経済的合理性に欠けるため、そもそもマネをしたいとも思わない戦略、または他社がマネをすると、かえって利益を損なってしまうような戦略こそが、クリティカル・コアの条件だと言っているのです。

例として、楠木氏はスターバックスをあげています。スターバックスは「第三の場所」というコンセプトを実現するために、通常ならばフランチャイズ方式にすべきところを、全店を直営店方式で運営しています。
直営店方式にすると、設備投資もかかるし、人件費などの固定費もかさみます。また出店に失敗したときのリスクも集中します。フランチャイズ方式にすれば、これらのリスクを回避しつつ、ロイヤルティを回収できるのです。にもかかわらず、スターバックスは直営店方式にこだわります。
その理由は、第三の場所というコンセプトに合致させるためには、ゆったりと落ち着いた雰囲気の店舗づくりが欠かせないからです。
裏を返せば、他のコーヒーチェーン店がスターバックスのマネをしたくても、直営店方式は固定費や設備投資にお金がかかります。マネをしたくてもできない、またはマネをしたいと思わない方式だということがわかります。
しかし、これは非常に勇気のいる逆説的な戦略です。常識を覆し、発想を転換することではじめて、他社の追随を許さない独自の戦略が可能になるのです

クリティカル・コアは業界の常識を覆したところにのみ、存在しています。ここは、事業計画の成否を握るクリティカル・コアを提示して、読み手の関心を一気に引きつけるクリティアカル・ポイントでもあります。

Q. 他社がマネできない独自の戦略は何か?(例)

安全性とコクのある味の追求およびカロリーカットの共存。だから、ソイ・マヨはアレルギーの子供やダイエット中の女性が、食べたいだけ食べられる。

※通常美味しい食品というのはカロリーが高く、カロリーの低いものは味をなかなか追求しづらいものです。また、有機食材を使った低カロリー食品は、自然食品というポジションに分類され、味については美味しくなくても仕方がないというスタンスのものが多く出回っています。そこでトヨムスメという大豆を使うことによって、マヨラーを唸らせるほど、コクのある味の追求が可能になったことをアピールしました。