ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営計画の立て方・進め方

お客さまはどんなタイプの人か?
前項では事業コンセプトを決めるために、具体的に1人のターゲットをイメージしました。ここでは、そのターゲットと同じように感じ、行動する人はどういうタイプの人たちなのかを具体的に絞り込んでいきます。

タイプ分け(セグメンテーション)をする

ターゲットを絞り込むためには、まずお客さまをカテゴリーごとに分類します。これを「セグメンテーション」と言います。
お客さまの分類方法としては、2通りの方法があります。
  • 顧客の属性で分ける(年齢・性別・職業・家族構成など)
  • 物理的なエリアで分ける
属性の分類としては、たとえば次のようなものがあります。
  • 年齢と性別
  • 職業
    サラリーマンか自営業者か、または事務職なのか、肉体労働者なのか、コンピュータを使うのか使わないのか など
  • 収入
    年収300万円以下か800万円以上か、世帯収入がいくらか など
  • 家族構成
    結婚しているのかしていないのか、女性なら、働いているのか働いていないのか、子供がいるのかいないのか、子供の年齢 など
  • 所有物
    家を持っているのか賃貸なのか、車を持っているかいないか など
  • 性質
    新しもの好きなのか保守的なのか、流行を追うのか追わないのか など
  • 趣味
    ゴルフが好き、海が好き、山が好き、魚釣りが好き、旅行が好き など
また、「愛好者」という分類の仕方(セグメント)もあります。ある製品を愛好している人たちは、同じような消費傾向にあると考えるわけです。これは、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったように、アマゾンがとりいれて成功しているやり方です。
どのセグメントがよいかは、実用的な商品か嗜好性の強い商品か、ロイヤリティが高い商品か低い商品かなど、商品の特性によって異なります。実用性が強い商品なら、それを使っている人たちの性別・年齢をセグメントしますし、嗜好性が強い商品なら、ある程度お金のある人たちをターゲットに、年収でセグメントしてもよいでしょう。
いずれにしても、どんな分類をすれば最も効果的にターゲットが持っている特徴をつかめるのかは、あなたがターゲットとなる人々をどれだけ理解できているかにかかっているのです。

ターゲット顧客を絞り込む

様々な属性でお客さまを分類したら、自社のターゲットにふさわしいタイプのお客さまを絞り込みます。これを「ターゲッティング」と言います。
具体的には、下の方法によってお客さまを絞り込んでいきます。
  • その商品を買ってメリットを受ける顧客を探す
  • ターゲットの行動パターンを推測する
その商品を買ってメリットを感じてくれるお客さまは誰なのかをピックアップするには、セグメントごとのお客さまについて仮説を立てるところからスタートします。
このセグメントのお客さまなら、こういう商品を見たときこういうふうに感じて、こういう行動をとるだろうと、お客さまの反応を予測し仮説を立てます。そして、タイプごとの仮説をもとに、絞り込みをかけます。
その際、前項でイメージしたときと同じように、具体的なライフスタイルについての仮説を立てて予測します。
Soup Stock Tokyoの遠山正道氏は「秋野つゆ」という女性のライフスタイルを細部にまで想像したそうです。
仮説が間違っていたら、その後の販売戦略は何をやってもうまくいきません。ここでも、あなたが、ターゲットとなる顧客の特性をいかに理解できているか、が重要なポイントになってきます。

絞り込むターゲットは、1つとは限りません。たとえば30代・女性・未婚・外資系企業で働いている、というターゲットを決めたら、そのターゲットに共通する人が他にいないのかを探します。もしかしたら、子供のいる40代の男性がターゲットと同じ行動パターンをとっているかもしれません。だとすれば、40代・子持ちの男性も、ターゲットとして捉えることができます。
本稿では家族構成や子供の年齢から、「小さな子供を持つ母親」というセグメントを1つ捉えました。しかし、もう一度定義付けを変えて、「食の安全に不安を抱いている消費者」というセグメントに分けるとどうでしょう。
マヨネーズは大好きだけれどダイエットをしたいと思っている人たち、もしくは、食品の表示にこだわり有機野菜や添加物の入っていない食品を好んで選ぶ人たちもターゲットに入ってきます。彼らは、ある程度高学歴であったり、年収が高くて生活にゆとりがあると想像できます。

次にそういう人たちは、普段どこに買い物に行くかを予測し、分類します。彼らは、普通のコンビニにはあまり行かないけれど、ナチュラルローソンでは買い物をするのではないかなどと、仮説を立てるわけです。
もちろん仮説だけでは不十分です。仮説を立てたら、その仮説が正しいかどうかを検証するための調査が必要です。調査の方法としては、内閣府が発表している国民生活白書や、厚生労働省が発表している国民生活基礎調査なども参考になります。また、各上場企業が出している調査報告書や、保険会社やリサーチ会社がインターネットに掲載している各種の報告書を見ることで、ある程度の推測をすることができます。

共通して“困っている人”を探す

共通のセグメントを見つけるには、何かに共通して困っている人たちを探すという方法もあります。
たとえば、道路に段差があって困っている人。ベビーカーを押すお母さんだけではなくて、車椅子の人たちや高齢者も同じように困っています。彼らは共通して、段差のない道路を望んでいます。そうやって共通項を見つけて絞り込んでいくことができるのです。

最後に、事業ドメインは、ビジネスを展開していく戦場のことですから、当然に事業コンセプトとも一致していなければなりません。ターゲットとして選んだお客さまと一致しているかのチェックも忘れずに行ないましょう。

Q. お客さまはどんなタイプの人か?(例)

※「ソイ・マヨ」という高品質高価格の商品であるため、年収や家族構成を中心にセグメントしました。また、ソイ・マヨの販路を考えると、生協やネット利用の有無、さらに年齢もセグメント分けのポイントになると考えました。生協については、高級スーパー利用層は生協をよく利用するというデータがあったため、とりあげています。○が「この商品に関心を持つ層」、色をつけたところは「この商品を実際に買ってくれそうな層」です。このように2段階に考えることで絞り込みがうまくいきます。ここから子供がいる大卒以上で年収800万円以上の、仕事を持ち、ネットや生協を利用する女性、年収800万円以上の40代などがお客さまのタイプとして浮かんできました。