ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営計画の立て方・進め方

管理表(1) 予算管理表の作り方
予算管理表で予算と実績に差異が生じた場合には、原因を分析して、差異解消に向けて対策を講じていく

予算管理の利点と注意点

経営計画書の月別目標利益計画の内容を詳細に管理する場合、予算管理表を作成します。月別目標利益計画において、計画の数値と実際の数値に差異が生じた場合には、この予算管理表をもとに、原因を分析して対策を検討していくのです。予算管理は、経営者、管理者、一般社員にとって次のメリットをもたらします。
予算管理がもたらすメリット

●経営者にとってのメリット
(1)経営計画の達成状況をリアルタイムで把握できる
(2)予測される環境変化に注意を払うことができる
(3)責任を明確にすることができる
●管理者にとってのメリット
(1)何をすればいいのかが明確になる
(2)業績を測定する基準が明確になる
●一般社員にとってのメリット
(1)目標数値が明確になる
(2)費用を意識した行動がとれる

一方、注意点が2つあります。1つめは、「予算は予測や見積りにもとづいて作成した計画なので、環境の変化等で修正が欠かせないこと」です。もちろん、安易な修正はしません。
2つめは、「予算を作成しただけでは効果がなく、きちんと管理して初めて効果が出ることを認識すること」です。予算管理が実際に効果を十分に上げていくためには、経営者から一般社員まで、全社レベルでの理解と協力が得られることが大切です。どんなにすばらしい予算ができて、その予算を達成しようとしても、会社全体で取り組んでいく姿勢がなければいけません
予算は単なる希望や願望ではありません。予算管理を希望や願望としかとらえられないままでは、目標を達成できないだけではなく、企業として生き残れないのです。
●予算管理表
項目 年度予算 当月までの累積 ○月 ○月
計画 実績 差額 計画 実績 差額 計画 実績 差額
売上高                    
売上原価                    
材料費                    
労務費                    
外注費                    
経費                    
売上総利益                    
一般管理費等                    
人件費                    
賃借料                    
減価償却費                    
保険料                    
リース料                    
その他経費                    
営業利益                    
差異対策    
予算管理は、次の流れで計画していきます。

(1)年度単位の目標利益計画を基準に年度予算を作成する

もし、支店がある場合には、支店単位で予算管理を行ないます。本店と支店を一緒に管理して、支店は月次の売上のみを本社に報告して終わっているケースがよくありますが、これでは「どこで利益や損失が出ているのか」がわからず、責任の所在も曖昧(あいまい)になります。こうしたことから、全社レベルの予算管理だけではなく、支店単位の予算管理が必要です。
支店単位の予算管理を行なう場合、本社経費の取扱いに留意します。基本的には、本社経費は本社で予算管理をします。本社経費を支店に配分している例をよく見かけますが、その場合には「配分基準」を明確にし、各支店で公平になるように注意を払う必要があります。また、本社経費を支店に配分したとしても、あくまでもその管理は本社が行なうことを忘れないでください。

(2)月次の予算の作成を行なう

基本的には、年度予算を月次単位に割り振っていきます。ただ、季節変動のある会社は、過去何年かの季節変動の実績を分析し、来期の変動要因を考慮して割り振るなどの工夫が必要です。
予算管理表としては、当月までの累計の計画、実績、差額と月別の計画、実績、差額を作成していくことが一般的です。

(3)月次決算を行なう

中小企業の場合には、顧問税理士から年に一度、決算書が送られてくるのみで、月次の試算表がない場合が少なくありません。これでは、年に一度だけの決算時期にならないと、儲かったのか損したのかがわからず、その間に何もできないことになります。
計画経営には試算表が必須です。試算表がない場合には、予算管理をはじめることを機会に作ってみてください。
また、たとえ試算表ができていても、支店単位に作成されていない場合があります。その場合には、伝票の起票段階で支店別に区別するなど、事務手続きを変更して、支店別に試算表ができるようにします。

(4)差異分析を行なう

予算と実績に差異が生じた場合には、その原因を分析しなければなりません。この分析をおろそかにしていたのでは、予算管理をやる意味がありません。
予算と実績との差異の原因分析は、「(1)仕事のやりかたに問題がなかったか」「(2)決まったことを実行していたか」「(3)方針に間違いはなかったか」という3点を検討していきます。
そして、原因が把握できたならば、対策を早急に実施します。仕事のやりかたが悪い、決まったことを実施していない、方針に間違いがあるような場合には、責任者を指導して軌道を修正していきます。
一般的に、予算が未達成の場合には、取引先や環境のせいにしてしまいがちです。こうした理由で安易に予算を修正してしまうと、当初の利益目標の達成は不可能になるので、注意してください。ただし、天変地異などの不測の事態には予算の下方修正が必要となりますが、極力最小限にとどめるようにします。