ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営計画の立て方・進め方

SWOT分析で外部環境と内部環境を分析する
自社を取り巻く環境は、外部環境として自社を取り巻く機会と脅威、内部環境として自社の強みと弱みで把握する

SWOT分析で企業の現状を把握できる

経営計画では、自社の置かれている現状を分析する必要があります。具体的には、自社を取り巻く「外部環境」と自社の「内部環境」を把握することになります。
外部環境と内部環境の分析手法として、「SWOT(スウォット)分析」が挙げられます。SWOT分析は、米国のスタンフォード大学で考案され、経営戦略のツールとして利用されている有名な手法です。
SWOTでは、外部環境を「機会(Opportunities)」「脅威(きょうい)(Threats)」という点、内部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」という点から見ます。なお、SWOTという名称はこれらの頭文字からとられたものです。
SWOT分析
  良い影響がある 悪い影響がある
外部環境 機会(Opportunities) 脅威(Threats)
内部環境 内部環境強み(Strengths) 弱み(Weaknesses)

外部環境を分析して「機会」と「脅威」に分ける

まず、外部環境を分析します。外部環境とは、「政治環境」「経済環境」「社会環境」「技術環境」「市場環境」「労働環境」「資金環境」などを指します。
そして、外部環境を「機会(チャンス)」と「脅威(問題)」という観点からSWOT分析します。外部環境が自社にとって好機となっていることを機会として挙げていきます。
一般的に、外部環境は1企業で左右できるものではありません。たとえば、建設業を「政治環境面」で見ると、住宅ローンの減税等により住宅税制が充実した場合は機会といえます。また、「社会環境面」では、住宅や建造物のバリアフリー化が推進されており、高齢者用住居でも推進できるという点で機会といえます。さらに、「市場環境面」を見ると、近年では、高齢者、防災、環境の関心が高まっているので、その分野での建設の発展性があり、機会といえます。
一方、外部環境が脅威となっていることを問題として挙げていきます。建設業を「政治環境面」で見ると、公共投資が毎年削減された場合には、市場が縮小していくので脅威といえます。また、「社会環境面」では、現在は人口減少の傾向にありますが、住宅着工面から見ると縮小していくために脅威となります。さらに、「市場環境面」を見ると、建設需要の規模を示す建設投資額が低迷している場合には、建設需要が伸び悩んでいるために脅威となります。

内部環境を分析して「強み」と「弱み」に分ける

外部環境の分析がすんだら、内部環境を分析します。内部環境では、自社の持っている「財務力」「人材力」「商品力」「サービス力」「営業姿勢」などを分析します。そして、内部環境を「強み」と「弱み」という観点からSWOT分析するのです。内部環境の強みは、自社にとって内部環境が他社より優れていることです。たとえば、建設業であれば、商品力について「自社で独自の工法が開発されており、他社より低コストで建設できること」などが強みになります。
一方、内部環境の「弱み」は、内部環境が他社より劣っていることをいいます。たとえば、人材力について「人材教育がなく、社員の退職率がきわめて高いこと」などは弱みとなります。
内部環境の中で、とくに重要なのは「財務力」です。財務力に問題があれば、設備投資や資金繰りに影響が出てきます。たとえほかの内部環境がよくても、企業活動に大きな問題が出てきます。
そのため、財務力のどこがよく、どこに問題があるのかをしっかり把握する必要があります。また、この財務力の状況は、経営計画の「経営目標」や「利益目標」に大きな影響を及ぼします

財務力を3つの点から分析する

財務力は、損益計算書P/L:Profit and Loss Statement)や貸借対照表B/S:Balance Sheet)といった決算書で判断します。決算書を見ることで、自社の経営成績をきちんと分析し、自社の強みや弱みを把握しましょう。
一般的には、企業の財務力を「収益性」「効率性」「安全性」の3つの点から見ていきます。

(1)収益性から見た財務力

収益性とは、「会社がどれだけ利益を上げているか」を2つの視点で見るものです。1つめの視点は、「売上高に対してどれだけ利益を上げているか」を見る売上高利益率です。さらに、売上高利益率は「売上高総利益率」「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」に分けられます。
3種類に分けられる売上高利益率

・売上高総利益率(売上高に対する売上総利益)
会社の商品がどれだけ利益を上げているか
・売上高営業利益率(売上高に対する営業利益)
会社の経費を入れた営業活動の結果どれだけ利益を上げているか
・売上高経常利益率(売上高に対する経常利益)
企業の財務面を含めた事業活動全体がどれだけ利益を上げているか

2つめの視点には、「会社の全資本(資産)でどれだけの利益を上げたか」を見る総資本利益率です。一般的に、「総資本経常利益率(総資本に対する経常利益率)」を見ます。売上高利益率と総資本利益率は、いずれも利益率が高いほどいいと判断でき、次の数式から算出できます。
(売上総利益÷売上高)×100%=売上高総利益率(%)
(営業利益÷売上高)×100%=売上高営業利益率(%)
(経常利益÷売上高)×100%=売上高経常利益率(%)
(経常利益÷総資本)×100%=総資本経常利益率(%)

(2)効率性から見た財務力

効率性とは、「会社の資本をどれだけうまく運用できたか」を見るものです。この指標として、「会社の全資本を使って資本の何倍の売上高を上げたのか」を見る総資本回転率があります。回転率が高いほどいいと判断でき、次の数式で算出できます。
売上高÷総資本=総資本回転率(回)

(3)安全性から見た財務力

安全性とは、「会社を維持していく体力がどのくらいあるか」を見るものです。この指標として、「流動比率」と「固定比率」があります。
流動比率は、「1年以内に支払わなければならない負債(流動負債)に対して、1年以内に現金化できる資産(流動資産)がどれだけあるのか」を見るものであり、100%以上が望ましいとされています。
また、長期的視点から「純資産で固定資産をどのくらいまかなっているのか」を見る固定比率(純資産に対する固定資産)があります。固定資産に投下された資本は長期にわたって固定化されるため、できるだけ純資産でカバーすることが望ましいといわれています。なお、流動比率と固定比率は次の数式で算出できます。
(流動資産÷流動負債)×100%=流動比率(%)
(固定資産÷純資産)×100%=固定比率(%)