ビジネスわかったランド (経営・社長)

やっかいなトラブル

社内で金銭不正が発生した。牽制システムを強化したいがどうすればよいか

経営者が数字に明るくなるとともに、自己の責任で牽制システムを構築する。

2006年5月に施行された会社法では、金銭不正を含む不法行為などの統制システムの構築義務が、経営者にある旨が明文化された。
中小企業の金銭不正の多くは、高度な細工を駆使した手法によるものではなく、誰でも思いつくような単純な手法によるものが多い。
大企業のような重厚な内部統制システムを構築しなくても、いくつかの牽制システムさえ導入していれば防げるものだ。となれば、やはり経営者の責任は重い。
具体的には、
・領収書や棚卸資産、滞留債権などの管理をしっかりと行なう
・一人にいくつもの管理業務を兼務させない
・とくに貸借対照表のチェックを怠らず、損益とともにキャッシュの動き、資産負債の動きを経営者が監視する
・万一不正が生じた場合、厳しく罰する
・仕入れ業者等からのバックリベートを厳禁し、社員の道徳観を常に確認する
といったことである。

<< チェック機能の形骸化防止を >>

大企業では、分業を進めることで大抵の不正防止が可能になる。
しかし従業員数の少ない中小企業において、できるだけ有効な不正牽制システムを導入するには、いくつかの工夫が必要となる。

(1)経営者が不正の芽を生み出していないか
成長企業への最大の経営資源は、「人的エネルギーの維持」であるはずだ。「ろくに仕事をしない親族を多数社員として抱え込む」「経営者自身が金銭的にルーズで公私の区別をつけていない」というように、従業員の士気を削ぐ振る舞いは、不正の芽を経営者自ら育てているようなものである。

(2)会計数値は社内で透明化されているか
まず、経営者が数字に明るいことは、それだけで大きな牽制システムとなる。いままで食わず嫌いでこられた方には、ぜひ一度、経営分析の手法や財務諸表の成り立ちなどを勉強されることをお勧めする。
ただ、多忙な経営者はその時間がなかなか取れないのが現実だろう。
そのときは数字に明るい側近をおき、常に会社の経営状況、財務状況の説明を受けるようにする。顧問税理士にその役割を頼むのも一案である。
また、不正は「明るいところ」では起こらない。社員にも業績を公表し、皆で議論していれば、ほとんどの不正は防止できるはずである。
その場合、月次損益集計の早期化、部門別損益管理、予算実績分析などを実施する必要があり、経理が正確かつ迅速に行なわれるしくみ作りが最低限必要になる。

(3)牽制システムは必ずチェックされているか
せっかく導入した牽制システムも、運用担当者以外の担当者により、運用状況がチェックされないと、システムはいずれ機能しなくなる。誰しも面倒なことは避けて通りたいものだ。
定期不定期でのチェック体制は性悪説に基づくものではなく、経営者の責任として構築して欲しい。


月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。