ビジネスわかったランド (経営・社長)

やっかいなトラブル

営業車の交通事故で、暴力団と思しき輩から法外な要求を受けた

処理を急がず、まず検討する時間を要求する。

相手が暴力団関係者かもしれないというだけで、言いなりになる、あるいは別の暴力団に仲介を依頼したりする。いずれも絶対にすべきことではない。すぐに結論を出さず、検討する時間をまず要求することだ。
どんな車と、どんな形で、どの程度の事故を起こしたのかは不明だが、相手が高級外車の場合、バンパー取替えだけでも多額の費用を要することがある。車種によってはパーツが国内になく、本国から輸入するということもあり、そうしたケースではさらに多額の費用がかかるだろう。保険の範囲内で処理するのは難しいかもしれない。
一方で、相手が車両の交換に固執するケースもある。その理由としては「車の所有者ではないから」というものが考えられる。借りた車だから、あるいは無断で乗り回していたので、早急に原状に回復して所有者に返したい。一応、もっともな理由ではある。
そういった可能性も考慮しつつ、早い段階で車両の真の所有者が誰なのかを確認しておくことだ。所有者が別にいるとわかれば、実際の所有者を交えて折衝する必要が出てくる。
質問者側が明らかに加害者である場合は、賠償内容を検討するためにも、パーツの有無や取寄せに要する期間、取替え費用、修理期間を調査し、取替え不能の場合の対処なども考えて妥当な賠償金額を算出することだ。
相手が暴力団関係者だからといって、やっかい払いのように処理を急ぎ、法外な賠償金を支払うべきではない。

<< 脅しには屈しない姿勢で >>

暴力に対しては次のように考えるべきだ。もしも相手が殴りかかってきたならば、チャンス到来と、黙って殴らせる。明らかな刑事事件が発生するわけだから、暴力をふるった側が不利になるのは自明の理。
もっとも、暴力団側は殴れば負けということを心得ており、両手を後ろに回したり、ズボンのポケットに両手を入れたりして、相手の目の前に顔を突き出すなりして脅すのが常套手段。訴えられた場合に、暴力行為を行なう意思のなかったことを示すための策である。
私は、中小企業の経営者の相談相手として、様々なトラブルに遭遇し、暴力団関係者とも折衝してきた。一例を挙げれば、倒産した会社の社長の自宅兼事務所を、暴力団幹部などの一団が占拠したことがあった。
組員が机の上にふんぞり返ってあたりを睥睨し、幹部は椅子に座って黙ったままタバコをふかす。社長は不在で、社員たちは部屋の片隅に固まっていた。暴力団側が「社長が戻ってくるまでは帰らない」という状況下で依頼を受けた私は、債権者の一人と名乗って幹部組員と面談し、彼らの言い分を聞いた。
そのうえで、倒産した会社の今後のことを詳しく説明し、状況の変化等については他の債権者と同様に報告すると約束したが、特別扱いはしない旨、クギを刺した。
すると、彼らはおとなしく帰り、以後、経過報告の約束を果たしたところ、一般の債権者と同額の配当で収まった。
特別扱いはしない。これは、質問のようなケースでも同様である。適正な賠償額を決め、それに相手が強硬に反論してきた場合は、法廷闘争で決着をつければよいのだ。


月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。