ビジネスわかったランド (経営・社長)
やっかいなトラブル
銀行からの金利引上げ要求を受けたときはどうする?
言うべきことは言いつつ、銀行に依存しない体質を目指す。
日銀のゼロ金利政策解除などを理由に、貸出金利の引上げ要求を行なう金融機関は少なくない。しかし、これに安易に応じることは、企業の存亡にかかわると認識すべきである。以下を参考にして、中小企業経営者の皆さんには間違いのない対処を行なっていただきたい。
<< 折衝のポイント >>
(1)基本的に応じない
通常の銀行取引において、企業は相応の実質金利を負担するなど十分なメリットを銀行に与えている。引上げ要求に唯々諾々と応じる義務はない。
(2)代替要求を条件とする
やむなく金利引上げ要求に応じる場合においても、非担保の預金の解放を要求するなど代替条件を提示し、実質金利負担増の抑制や手元余剰資金の確保を行なわなくてはならない。これにより、採算性の維持と資金繰りの安定化を図るのである。
(3)既存借入と新規借入の区分取扱いを求める
金利引上げ要求に応じるにしても、新規借入分だけについて呑み、既存借入分については現状維持を求めるなど、借入時期に応じた区分交渉も大切だ。
銀行にとって、資金は商品であり、既存借入はいわば仕入済の商品といえる。一般の商取引において、仕入済商品の価格について、後で引上げ要求を受けることなどありえない。それと同様に考えれば、当然要求に応える必要などないはずだ。
(4)銀行のトリックを見抜く
新規借入申込時に、「債務一本化」とした増額融資を行なうケースが増加している。しかし、既存借入金利が低利のときのこの手法は、銀行による巧妙なトリックなのである。
資金調達額のみに目を奪われることなく、自社に不利益な場合には新規借入は別建てで要求しなければならない。
(5)銀行の本音を見抜く
ここ数年行なわれてきた「格付け見直し」による金利引上げ交渉に、銀行は踏み絵の意味あいをもたせてきた。要求を呑まない企業には支援を打ち切り、最終的には切り捨てを企図しているのだ。
交渉過程で銀行の厳しい姿勢が窺え、将来的な展望が見出せないときには、いたずらに取引維持に拘泥せず、資金調達手法の抜本的な見直しや取引金融機関の見直しを早急に行なうべきだろう。
(6)資金調達方法の見直し
従来型の民間金融機関取引から脱し、あわせて増資などの直接金融手法を検討するなど、新たな資金調達手法の構築が急がれる。
たとえば政府系金融機関の場合、貸出条件に適合さえすれば、債務者を差別することなく長期固定金利貸出を行なっている。企業にとって相当なメリットがあり、注目に値する。
(7)総資金需要の圧縮
資金調達の困難を訴える前に、キャッシュフロー捻出による総資金需要圧縮など資金管理の見直しを行ない、金融機関依存体質からの脱却を図る必要がある。銀行交渉の困難を訴える企業の大半の資金繰りがそもそも杜撰であることは事実である。
不利益を被る経営者の大半は、うまく自社の立場を主張できない「声の小さい」経営者だ。速やかに理論武装し、「なぜそうなるのか」と毅然とした態度で相手を質せる経営者として交渉に臨んでいただきたい。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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