ビジネスわかったランド (経営・社長)

やっかいなトラブル

新規得意先が示した契約内容に著しく不利なものがある

即座に契約を結ばず粘り強い交渉を行なう。

新規得意先はどんな企業にとっても喉から手が出るくらい欲しいものだろうが、たとえ大手企業でも破綻する時代。取引開始にあたっては慎重な対応が必要だ。しかも、先方が提示してきた契約内容が相当厳しい内容であれば、即座に契約を結ばないのが賢明といえよう。
正攻法で突っぱねればせっかくの取引がふいになる可能性はあるが、だからといって片務性の強い契約を唯々諾々と呑む必要はない。以下を参考に、リスク排除を考慮した間違いのない契約を結べるよう、粘り強い交渉をお勧めする。

<< 譲れない部分を明確にする >>

(1)契約期間は短めに
基本的には長期契約が望ましいだろうが、あくまでも相手は新規受注先。当初の契約期間は短期とし、契約の履行状況(有利不利)を見定めてから長期契約に移行するのが望ましい。

(2)曖昧条項の排除
契約文言中に含まれる「相当の理由」「その他」「など(等々)」といった曖昧な表現は後日のトラブルの原因ともなりかねないので、極力排除する。

(3)解除・解約条件の明確化
解除・解約条件でも著しく不利益な部分があれば、削除・修正を要求しておく必要はある。相手方の契約不履行時における「期限の利益喪失条項」の追加を要求するくらいは行ないたい。

(4)停止条件文言を活用
契約書に「継続取引」という言葉が使われている場合は、「継続的給付契約」となり、受注先にとって歓迎すべきものと受け止められがちだが、リスク回避の面で問題が残る。たとえば、相手が民事再生を申請するような場合であっても、契約を履行しなければならないのだ。
そのためにも、万一の際、こちらから取引が停止できる「停止条件文言」を盛り込むようにする。

(5)回収条件の明確化
おそらくこの部分が最も厳しい内容と思われる。資金化までに不当に長い期間を要するのであれば、その取引は考えもの。また、原材料支給の有無など、資金負担増となる契約条件を曖昧なままにしておかないこと。

(6)保全要求は慎重に
契約締結にあたり不動産担保提供や質権設定、第三者保証などの要求が行なわれている場合はとくに慎重に対応すべきだ。安易に応じず、当初は信用取引範囲内での契約に留めるようにし、それを超える条件しか認めないというのなら、契約を締結しないという決断も必要になってくるかもしれない。

(7)契約後の覚書は厳に慎む
契約を締結した直後に、補完的に「覚書」「追加約定書」などを取り交わすことがあるが、これらは長期取引に伴う取引数量の増大など、“発展的な要因”に限るべきだ。
そもそも、契約締結直後にそんな話をもち出すのは、原契約の不備を表明するのも同じ。合意できない部分は後日、覚書で対処すればいいといった対応はトラブルのもとだ。厳に慎むべきだろう。

(8)専門家に判断を仰ぐ
譲れないところを明確にし、場合によっては自社から契約を断るくらいの気構えが経営者には求められる。
厳しい内容が随所に見られるような契約書は、弁護士などの専門家に目を通してもらい、判断を仰ぐのが無難であろう。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。