ビジネスわかったランド (経営・社長)

やっかいなトラブル

取引先から債務の個人保証を求められた

保証額の限定に努めるとともに次善の策を打っておく。

債務の個人保証を求められたということは、会社の信用力が弱い、倒産の可能性が高いとみなされているということ。まずは、自社を見直す機会と受け止め、業務改善などを図るべきだ。

<< 相手の不安を取り除く努力を >>

個人保証の責任は非常に重いものがある。万一のことがあれば、再建のすべすら奪われ、最悪の場合、全財産を失ってしまい、家族にも多大な負担をかける。したがって、目先の事情を優先して不用意に行なうことは厳に慎むべきだ。
とはいえ、現実に個人保証を求められた以上、はねつけるのは難しく、要求を呑まざるを得ないのが実情である。
こうした要求がきた場合、経営者自らが相手先に出向き、個人保証を求めるに至った真意を確認することになるが、単に、退職した社員の無責任な話などの風聞をもとにしてのことならば、相手の不安を取り除くことで解決できるだろう。
そうではないとき、個人保証の要求には普通、取引を中止したい意向が暗に含まれている。どうしても取引を継続したいのなら、平凡な言い方になるが、誠意ある対応しかない。
相手側に取引継続の意思がまだあるようなら、代替案を聞いてみることだ。与信限度額や支払条件などで取引先から自社にとって相当不利なことが出された場合は、いっそ新規取引先開拓に踏み切ったほうがよいかもしれない。一方、取引継続の意思があまり見られないようならば、要求を呑むか、新しい取引先を探すか、二つに一つ。ここからは、まさに経営者の肚一つの決断となる。以下、要求を呑む場合の留意点を挙げる。
保証責任の範囲を明確にする

(1)債務保証額を限定する
保証行為の前提となるのは保証能力だ。いかに経営責任があるとはいえ、際限なくというわけにはいかない。能力を超えた保証は無意味であるばかりか、保証人の破綻を招く。
やむを得ず個人保証に踏み切る場合には、保証額を必要最小限にとどめる。支払手形面に手形保証を行なうといった個別保証方式を検討する。あるいは保証契約書作成時において保証限度額を明記する。そんなふうにして保証責任の範囲を明確にすることが何よりも大切である。

(2)保証期間を限定する
(1)と同じくらい重要なのが、期限の明記だ。できれば取引契約に見合った1~2年ごとの契約更新とすべきだろう。「限度無制限・無期限」といった保証契約が存在している場合には、速やかに限度・期間限定保証に切り換えておく必要がある。

(3)担保権設定はとくに慎重に
保証の補完条件として担保権の設定を要求される場合もあるが、これにはとくに慎重な対応が求められる。というのも、そこまで求めてくるのは、相談者が経営する会社を正常な得意先と考えていない証ともいえるからだ。まったく信用されていないわけだから、さらにきつい条件を以後も突きつけてくる可能性が高い。いったんは受けるにしても、新しい取引先を探すなど、次善の策を考えておくことが大切だろう。
預金などへの質権の設定要求などについても同じだ。金融機関はそうした行為を信用不安の予兆ととらえるからだ。


月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。