ビジネスわかったランド (経営・社長)
やっかいなトラブル
取締役として名を貸していた会社が倒産した
最悪の場合、損害賠償責任を追及されることもある。
会社法の施行で取締役は一人でもよいことになったが、実際には中小同族企業では人数合わせで知人等の名前を借りることも多く、文字どおり「名目的取締役」が多く見られる。
原則的には、社長であろうと名目的取締役であろうと、個人が法人の債務を肩代わりする必要はないが、中小企業では社長その他の取締役が個人保証をしなければ、金融機関から融資を受けられないのが現実だ。
その場合、保証人としての責任は追及されることになるが、あくまでも友人に頼まれて名前を貸しただけで、役員報酬も得ておらず、債務の個人保証などはしていないという場合であれば、倒産した会社の債務履行を要求される可能性は低いと思われる。
今回のことを肝に銘じ、名目的取締役には今後、絶対にならないことだ。
<< 取締役会議事録のチェックを >>
心配なのは、無断で保証人にされているケースがあるということだ。中小同族企業は信用力が弱いため、融資を受ける場合に取締役全員の個人保証を求められることがある。そこで勝手に取締役の印鑑が悪用された可能性がないわけではない。
保証人にされていた場合、責任を免れるには、本人が承諾していないことをどこまで証明できるかがポイントになる。決め手は、倒産した会社の経営にまったくタッチしていなかった(本当に名目的取締役であった)ことが立証できるかどうか。
もし役員報酬を受け取ったことがないばかりか、取締役会への出席もないのであれば、たとえ保証人にされていたとしても、無断で保証人にされたことの証明は難しくないはずだ。
ただし、印鑑を預けていたのであれば問題である。その印鑑を使って、取締役会に出席していたことにされる可能性もあるからだ。念のため、議事録を見せてもらい、その点を確認すべきであろう。印鑑を預けるという行為自体、そこに暗黙の了解があったのではないかと疑われる可能性もある。
<< 第三者からの損害賠償責任追及 >>
倒産した会社の保証人になっていなくても、債権者から経営責任を追及される恐れは残る。放漫経営による倒産であった場合は、経営陣の一人として社長の業務遂行を監視するなどの義務を怠る「悪意または重過失」があったとして、第三者から損害賠償を請求される可能性はあるのだ。前述したような間接的事実を積み重ねて「名目的取締役」であることが立証されるなら、損害賠償責任を追及される可能性は、現実には低いと思われるが、会社法に定められた取締役の責任は名目的取締役にも適用される。これは、いかんともしがたいところである。
取締役として名を連ねること自体、実際上は保証人になることと同じ意味だと考えられる誤解がなされるほどだ。したがって、たとえ親しい友人の頼みであっても、職務を遂行する自信がないのであれば、名前を貸さないほうが賢明というものだ。
もし、どうしても断れない人からの頼みであっても、取締役の印鑑だけは絶対に預けないことである。日本の社会においては、印鑑が重大な意味をもつということを併せて肝に銘じていただきたい。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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