ビジネスわかったランド (経営・社長)

やっかいなトラブル

振り出した手形が割止めを食らっているという噂を流された

事実でないなら泰然と構えるべき。取引先に対しては十分な説明を行なう。
 
要するに、信用不安の噂を流されているわけだから、何とかしてそれを払拭しなければならない。しかし残念なことに、妙案はない。地道な努力、慌てないこと――ある意味、これが最も効果的な方法といえる。

<< 問題は債務者の信用力 >>

対応策を考える前に、まずは「手形の割止め」について説明しよう。
企業が銀行に商業手形をもち込み、割引きを受けることは、資金調達の手法として定着しているが、その際、銀行は一定の制限を設ける。すなわち、顧客の信用度に応じて割引枠を与える「極度方式」、または個々の割引依頼ごとの「都度対応方式」によって対応する。
割引金利についても差をつけるのが一般的で、ご相談の「手形割止め」(顧客のもち込んだ手形を銀行が割り引かない)も、こうした顧客や手形銘柄の信用力によってなされるものだ。
銀行が手形割止めを行なう理由には、次の四つがある。
(1)手形の信用力不足
(2)手形銘柄の集中
(3)不明朗な手形
(4)債務者の信用力不足

<< 銀行へのアクションは不要 >>

まず認識していただきたいのが、銀行が割止めを行なう場合、その理由として手形振出人の信用不安を明言することは絶対にない。
なぜなら、銀行が不用意にこのような発言を行なえば、名誉毀損や信用毀損になる可能性が高く、振出人からどのような損害賠償請求がなされるかわからないからだ。事実、割止めの要因が手形の信用度不足の場合であっても、「銀行の判断」などと、あたり障りのない理由を付けるのが普通である。
つまり、銀行から噂が流されるようなことはないということだ。噂の出どころは、自らの信用不足で手形割引を断られた(理由(4))債務者の発言がほとんどと考えることができる。
よって、経営不安の事実がないのであれば、割引を拒否したとされる銀行はもちろん、自社の取引銀行に対しても、とくにアクションを起こす必要はない。むしろ、やるべきは噂の出どころを探ることで、並行して取引先に説明に赴くべきである。
現実的には、出どころを見つけ出すのは困難だが、もしわかれば、損害賠償請求も視野に入れた毅然とした対応を行なうべきである。厳しく抗議し、以後、不用意な噂を流布しないよう申し入れなくてはいけない。
一方の、取引先への説明だが、申し上げるまでもなく、経営者自らが赴くべきであろう。取引先もそうとう不安を抱いているはずだ。一担当者のレベルの話で、それを解消するのは難しい。早急に出向き、資料なども持参して、十分な事情説明を行なわなければならない。
ただ、割止めの事実がなければ、自社の経営に自信をもちさえすれば、いずれ周囲は噂を杞憂とみなすはずだ。「人の噂も七五日」というが、そう長引くことではない。逆に言うと、噂に一喜一憂し、あたふたしてしまうのが一番いけない。それによって「本当にそうなのではないか」と、とらえられてしまうからである。危機を乗り切れるかは、経営者の心のもち方次第、ということを忘れないようにしていただきたい。


月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。