ビジネスわかったランド (経営・社長)

簡単健康法

中国式胸さすり
中国式胸さすり
48歳の男性Mさんは、ある日突然、夜寝るときに耳鳴りに悩まされるようになった。頭が痛いということはない。耳が聞こえにくくなったということもなかった。ただ、たまたま血圧を測ったところ、最大血圧が184ミリ、最小血圧が82ミリもあった。かなりの高血圧だ。耳鳴りがするようになったのも、急激に起こったこの高血圧の影響らしい。
そこでMさんは、以前、友人が中国の気功師から教わったという「胸さすり」と呼ばれる健康法を試してみた。これを行なうと、すぐに血圧が下がると言われたものだった。早速試してみると効果は抜群で、即座に最大血圧が10~15ミリ下がり、寝ている間にもいっさい耳鳴りが起きなくなった。以後、毎日胸さすりを続けたところ、2週間後には最大血圧が130ミリ、最小血圧が80ミリにまで下がったという。
Mさんが行なった胸さすりとは、次のようなものだ。
(1)立って、あるいは座っていてもかまわない。手を熊手のように開いて、まず右手の指先を胸の中央にタテに並べる
(2)その状態で、左胸の外側(左肩のほう)へ指先を押していく。指先が肋骨と肋骨の間の筋肉を気持ちよくなでるような形になる。指先が外側へ行ったら、今度は中央へと戻ってくる
(3)先の2つの動作を鎖骨の高さから肋骨の下端のところまで、全部で36回繰り返す
(4)左胸が終わったら、手を入れ替えて、今度は左手で行なう
たかが、この程度でと思われるかもしれない。しかし、中国医学では理に適ったものなのである。これによって、肺経と呼ばれる経絡(気と呼ばれる生命エネルギーの通り道)の流れをよくして、肺の働きを高める。血圧を低くするのにも非常に役に立つ。

高齢者にお勧めの健康法
私たちが呼吸を行なうたびに、肺の肺胞(肺を構成しているブドウの房のような組織)が開いたり、つぶれたりする。そうして、酸素と二酸化炭素の交換が行なわれる。この肺胞は健康な成人で3億個(両肺)もあるのだが、ふだんの呼吸で、3億の肺胞が全部使われているわけではない。肺胞の10~30%は十分に開かず、つぶれた形のままになっている。
さらに、呼吸は肋間筋(肋骨の外側と内側にはられた筋肉)や横隔膜(胸部と腹部を隔てるドーム型の筋肉の膜)など、いわゆる呼吸筋の働きによって行なわれている。しかし、これらの筋肉が硬くなってしまうと、胸郭(肺を包んでいる骨格)が広がらず、その容積が小さくなり、肺胞も十分に開くことができなくなる。
ところが、胸をさすることで経絡の流れがよくなって肺胞が開き、呼吸に関わる筋肉も緩まる。
また、肺胞の働きはガス交換を行なうだけではない。肺胞が大きく開くと、プロスタグランジンという生理活性物質がつくられ、血液の中に送りこまれるようになる。実は、このプロスタグランジンには、血管を拡張して血圧を下げる作用がある。
胸さすりで血圧が下がるのは、こういう仕組みからである。
この胸さすりは、早く行なわずゆっくりと時間をかけるといいだろう。呼吸もゆっくりと行なう。1日2回、朝と晩というぺースがいい。高血圧はいろいろな病気の原因となるので、高齢者にはぜひ実践してもらいたい健康法の1つである。

著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)