ビジネスわかったランド (経営・社長)

簡単健康法

ボックスエクササイズ
ボックスエクササイズ

体力測定でおなじみの踏み台昇降で運動不足を解消

車、エレベーター、電気洗濯機、電気掃除機など、便利な道具によって、私たちが体を動かす機会が社会からも家庭からも奪われている。もっと始末が悪いのは、それが当たり前のように考えられていて、多くの人が慢性的な運動不足に気がついていないことだ。
実は、太っている人はやせている人に比べて、じっとしていることが多いこともわかってきた。たくさん食べていなくても体を使わなかったら、食物から摂取したエネルギーは使われない。そのまま脂肪として溜め込まれてしまう。しかも、肥満になると今度は体が重くなったり、体力が落ちて、さらに体を動かさなくなる。肥満がより加速するわけである。
最近の研究でも、肥満の原因は過食よりむしろ運動不足にあるといわれている。
にもかかわらず、肥満の悪循環を断つ方法として、摂取カロリーを抑える食事制限だけを行なう人があとをたたないから始末が悪い。

たった5分でダイエット効果大
食事制限だけでは、根本原因の解決にならないどころか、ますます体力を落としてしまうわけだが、かといって、どう体を動かせばいいのかわからない人のほうが多いだろう。
「スポーツクラブに入会したけれど、長続きしなかった」
「早朝、速足歩きを始めたけれど、三日坊主で終わった」
「家で簡単にできる運動器具を通販で買ったが、部屋の隅でホコリをかぶっている」
しかし、そんなものぐさな人たちでも、運動不足を解消し余分な脂肪を体から追い出す方法がある。中京大学の湯浅景元教授が勧める「ボックスエクササイズ」という健康法だ。
ボックスエクササイズとは、要は踏み台昇降のことである。湯浅教授は、これを5分間行なうだけで肥満解消の効果があると言う。本当だろうか。湯浅教授に直接聞いてみた。
「踏み台昇降は、すでに体力テストなどでおなじみで、台の上に昇ったり降りたりする運動のことです。その程度の運動を5分間行なうだけで、どれほどの効果があるのかと疑問に思われるかもしれませんが、速足歩きを長時間行なうよりは、踏み台昇降を5分間行なったほうが、はるかにダイエットには向いているのです」
ダイエットのための運動として、速足歩きがよく知られている。一般的には、毎日40~60分必要といわれているが、日常的に体を使う機会が少ない人が、毎日それだけの時間を割いて行なうのは正直難しいだろう。だったら、もっと楽をして運動をすればいい、というのが湯浅教授の考えだ。いくら不精な人でも、5分くらいの運動なら苦にならないはず。ひまを見つけて取れる時間だ。
実際、その程度の運動で十分に効果があるという。踏み台昇降を5分間行なうことは、速足歩きの20~30分の運動量に相当する。つまり、ひまな時間を見つけて、5分間の踏み台昇降を1日2~3回をこまめに行なうだけで立派なダイエットのための運動になるのである。
湯浅教授によると、「ボックスエクササイズは、速足歩きより運動強度が強い」。短時間で十分なのは、そのためだ。
「人間の筋肉がもつ力をある程度、維持しようと思ったら、最低でも全力の力の半分を1日1回出さなければなりません。たとえば、速足歩きがどれだけ力を出しているかを調べてみると、せいぜい全力の15~20%です。ジョギングで頑張っても35~40%弱。意外に思われるかもしれませんが、踏み台昇降なら60%に相当します」
しかし、5分間で本当に肥満が解消できるのだろうか。
「最近、健康づくりのための運動として盛んに言われ出してきたのが、すき間時間を利用した運動です。わざわざ時間をつくって行なう運動は、やはり長続きしない。大切なのは継続することなのです。その点、ボックスエクササイズなら、オフィスや台所の片隅に踏み台を置いておけば、気軽に行なうことができる。忙しい人でも、1日数回行なうくらい簡単でしょう。たとえ時間が短くても、繰り返せばたいへんな運動量になります。ここが非常に重要で、毎日積み重なっていったらどうでしょうか。チリも積もれば山となる。体から脂肪を追い出し、筋肉を鍛えて、足腰の丈夫な体をつくることができます」

お金をかけずに健康が得られる
もう1つ、ボックスエクササイズのいいところは、お金がかからないことだ。
踏み台は簡単につくれる。高さ20センチほどのダンボール箱を用意して、その中に不要な新聞や雑誌をしっかりと詰めて重くする。人が乗ってもつぶれないようにぎゅうぎゅうに詰める。詰めたら、ふたを閉じてガムテープで止める。こうしてでき上がった台の底の四隅に市販の階段用滑り止めテープを貼り、台の上に乗っても滑らないようすればでき上がり。
最初のうちは、20センチ以上の高い台をつくらないようにすることがコツだ。台を高くしすぎると、きつくなり、楽しく続けることができなくなる(身長が高い人、体力のある人は、それ以上高くしてもかまわない)。何より気楽に行なうのが大切なのだ。
もちろん、やり方も簡単。台に「昇って」「降りて」を繰り返すだけ。腕は大きく振り、昇る際には太ももをしっかりと上げる。好きな音楽を聴きながら、あるいはテレビを見ながら行なってもかまわない。昇り降りはリズミカルに行なうことが大切だから、音楽を聞きながらのほうがいいかもしれない。
5分は短いからといって、急ぐ必要はない。少し呼吸はきつく感じられるけれど、おしゃべりはできるというスピードがいい。また、足への衝撃を少なくするために、ジュウタンや畳の上で行なうようにするといいだろう。時間は5分といったが、あくまでこれは1つの目安だ。できる人は10分、20分行なってもかまわない(ただし、5分以下では効果なし)。
長く続けていると、次第に体力がついて、5分ぐらいでは物足らなくなってくるかもしれない。その場合は時間を延ばして行なう方法もあるが、5分で効果を上げたいのであれば、重りを持って行なう方法もある。重りはダンベルでもかまわないが、お金をかけないのもこの運動の特長だから、ペットボトルの再利用をお勧めする。500ミリリットルのペットボトルに水を入れ両手に持つと、1キロ余分な負荷がかかる。
とにかく、実践あるのみ。なるほど運動不足の解消にもってこい、と実感できるはずだ。

著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)