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簡単健康法

入れ歯(噛み合わせ)健康法
入れ歯(噛み合わせ)健康法
年齢が高くなるにつれ、歯が悪くなる人が増えてくる。早ければ40代で入れ歯が必要な人もいるくらいだ。実はこの入れ歯、単に咀嚼するためだけでなく、その人の運動能力を高めたり、さまざまな不快な症状を改善することがわかってきた。たとえば、いい入れ歯をつくると、膝にサポーターをして歩いていたお年寄りのサポーターがいらなくなったりする。腰痛や肩こりまで解消されてしまう。なぜそうなるのか。
東京医科歯科大学補綴科の早川巌助教授は次のように語る。
「いい入れ歯をすると、噛み合わせがよくなるだけではなく、姿勢が安定し、体に無理な負担がかからなくなるため、と考えられます。噛み合わせがよくないと、下あごが不安定になり、これが頭部の筋肉に作用して、首が上手に支えられなくなる。さらに、筋肉や神経に負担を与え、体全体のバランスを低下させてしまうのです」
以上のことを早川助教授は、実験で確かめている。入れ歯を必要とする8名の患者に新しい入れ歯をつくり、入れ歯をつけていないときと、つけているときの歩行リズムや速度、歩幅などを調べてみたのだ。
結果は、全例でいい数値が出た。歩行周期の平均値は、入れ歯を入れる前が0.991秒、入れたあとは0.977秒で明らかに短縮した。歩行速度も、入れ歯を入れる前は121.01センチ/秒、入れたあとは128.1センチ/秒で速くなっている。歩幅も大きくなったという。
「重心が不安定であれば、振り出される足はどうしても短くなり、歩幅も狭まります。当然、歩行周期が伸びて、速度は遅くなる。対して、噛み合わせがよくなると重心が安定し、体のバランスがよくなる。振り出される足が大きく広がって歩幅が伸び、速度も上がるのです」
結果、肩や腰に無理な負担がかからず、肩こりや腰痛も起きにくくなるわけだ。膝も安定し、腰痛も解消される。噛み合わせがよいと、噛むたびに脳にいい刺激が与えられ、ボケの予防にもなることもすでに知られている。さらに、食物をよく咀嚼できれば、消化・吸収がよくなり、全身が若返る。まさに、入れ歯によって後半生が左右されるといってもよい。

うまい歯科医の探し方
日本人の寿命が延びてきたことから、入れ歯が健康に大きく影響することに多くの人も気づき始めている。そのため、噛み合わせのいい入れ歯をつくることができるかどうか…歯科医の技量がますます重要視されるようになっている。では、いい入れ歯をつくる歯科医はどのようにして探せばよいのか。
簡単なのは大学の補綴科出身の医師を選ぶことだ。補綴科出身なら、まず入れ歯のプロといってよい。ただし、現在の法律では補綴のプロであっても、それを標榜できない。もし補綴の専門医に入れ歯をつくってもらいたいのなら、その医師の大学での専門をずばり聞くことだ。
本人に聞くのが難しいのなら、看護婦や受付で聞いてもいい。あるいは、大学病院の補綴科に尋ねるという方法もある。
もう1つ、入れ歯をつくってもらった人から直接、話を聞くことも大切だ。いい入れ歯をつくってもらった経験のある人なら、どこの歯科医がうまいかよく知っているからである。「たかが入れ歯、されど入れ歯」、もっと入れ歯を重要視してもらいたい。

著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)