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簡単健康法

バンソウコウ健康法
バンソウコウ健康法
国立H大学のY学長は、非常に興味深い健康法を実践している。やり方は簡単で、バンソウコウで口を閉じて寝るだけ。そうすることで、のどの乾燥を防ぐことができ、風邪を予防する。また、うるさいいびきも防ぐことができるという。
実は、Y学長はオペラ歌手でもある。ただし、趣味でオペラをしているというのではなく、プロそのもの。昭和40年にイタリアのパブィア大学(耳鼻科)に留学したが、同時にミラノの音楽院でオペラを勉強した。「学生時代から声楽を習い、すでに昭和29年からオペラの舞台に立っていますから、歌手のほうが医師の経歴より長いのです」と言うくらいだ。
いまでも祝賀会や学会の余興を入れれば、ほぼ毎週ステージに立っている。7年前の学長就任式では就任演説のあと、『オー・ソレ・ミオ』などを熱唱し、「国立大では前代未聞の学長就任」と英字紙に報じられたほどだった。

思いつきで始めて…
Y学長の歌手歴は驚くほど長い。一般にテノール歌手の声帯は酷使され、50歳を過ぎたころには伸びきったゴムのようになるといわれるが、60歳を過ぎたY学長が楽々、声を出せるのも、自分自身を実験台に耳鼻科医としてさまざまなことを医学的に試みてきた結果だった。肝心の「バンソウコウで口を閉じて寝る」という健康法も、20年前にロサンゼルスを訪れたときにひらめいた。
ロサンゼルスは砂漠のような気候で、寝ている間にものすごくのどが乾燥する。しかし、睡眠中にのどが乾燥してしまうのは、多くの場合、口を開けて寝るからで、それならば、バンソウコウで口を閉じて寝ればいいという大発見をしたのだった。
実際、試してみるとこれがよく効いた。
「のどが乾いて、夜中に目を覚ましたり、お年寄りが風邪を引きやすいのも、多くの場合は、本人も知らないうちに口を開けて寝ているため。のどが乾燥してしまうからです。救急バンソウコウで口を閉じて寝ると、のどが乾いて夜中に目を覚ますことはなくなる。風邪の予防にもなります」
それともう1つ、いびきを防ぐことができる点も特長だ。
「私はいびきがうるさいので有名なのですが、これをするようになってからピタリといびきが止まってしまいました。口を開けて寝ると、舌の根元が下がって気管を狭くします。すると、軟口蓋(のどちんこの両側にあるもの)が振動しやすくなり、いびきをかきやすい。しかし、口を閉じて鼻呼吸をすると、舌の根元がのどのほうに落ちないので、いびきは起こらなくなるのです」
やり方は、救急バンソウコウのガーゼの部分を唇に当て、斜めに貼る。方向は左右どちらでもかまわない。ただ、女性の場合、救急バンソウコウを貼ると、かぶれることがあるので、かぶれにくいバンソウコウを選んで試すといい。一方、男性はめったにかぶれないし、朝になると口ひげで少し浮くので、取り外しも便利だ。あまり知られていないが、最近では口を閉じるための専用テープも市販されている。
Y学長はいまでは、救急バンソウコウが手放せないような状態になっているという。旅行に行くときは必ず持っていくし、なければすぐに薬局に買いに走る。風邪を引きやすい方、いびきで困っている方にはお勧めの健康法だ。

著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)