ビジネスわかったランド (経営・社長)

簡単健康法

咀嚼痩身法
咀嚼痩身法
7年ほど前、愛知県の医師や歯科医の間で、小中学生に肥満児が増えていることが問題になった。子供のときに肥満になると、成人してからも引き継いでしまうことが珍しくない。しかも、それを引き金として生活習慣病を引き起こす確率も高くなる。
そのため、愛知県の医師会や歯科医師会が主体となって、子供たちの肥満を改善するセミナー(「次の世代のQOLセミナー」)を開催することにしたのだが、そこで意外な事実がわかってきた。咀嚼回数を増やすと肥満が改善される、ということである。
肥満は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまったために、余分なエネルギーが蓄積されることによって起こる。基本的には食べすぎが要因なのだが、ほかにもさまざまな原因が考えられ、いまや生活習慣そのものが肥満を助長するようになっているとみられている。それには、食事の際の咀嚼回数も大いに関係している。
空腹感は脳の摂食中枢というところから、指令が起こると感じる。そして、食物を食べると血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇し、今度は満腹感を感じる満腹中枢を刺激する。これによって摂食中枢からの指令を抑制するようになり、「おなかがいっぱい」になる。ただし、血糖値が上昇し始めるのには食べてから20分ぐらいはかかるため、早食いをすると満腹感が得られず、知らず知らずのうちに食べすぎてしまうのである。一方、よく噛めばそれだけ食事に時間がかかる。つまり、満腹感が得やすい、というわけだ。
ところが、いまの子供たちはものを食べるのに一口で6回ほどしか噛んでいない。噛むというよりは、食べ物を流しこむと言ったほうがいい。そこで先のセミナーでは、少なくとも20回以上は噛んで食べるよう、子供たちに指導をしてみた。すると、てきめんに効果が現われた。
咀嚼回数が20回未満の子供たちはそれほど肥満度が改善されなかったが、20回以上の子供たちは確実に肥満度が改善されたのだった。もちろん、食事指導や運動療法など、さまざまな取り組みを行なった成果でもあるが、咀嚼回数が肥満度の改善に大きく役立っているのは間違いないと関係者はみている。

硬めの食品を口にする
以上は、子供だけではなく、当然のことながら、大人にも当てはまる。
とはいえ、いままで早食いをしてきた人が、急に20回も噛んで食べるようにするというのは、大変なことかもしれない。食事の時間を惜しむくらい忙しい経営者なら、なおさらであろう。
ただ、そういう人たちでもちょっとした工夫で、噛む回数を増やすことはできる。たとえば、歯ごたえのある食品を食べるようにすれば、いやでも咀嚼回数は増してくる。肉だと、おいしいといわれるやわらかいものではなく、少し歯ごたえのある硬めのものを選んで料理をするといいだろう。また、ゴボウなど食物繊維を多く含んだ野菜や、ワカメなどの海藻類も積極的にとるようにしたい。要は、メニュー次第なのである。
また、意外なことかもしれないが、食べているときに噛む回数を数えていると、咀嚼回数が増えていく。「よく噛む」という強い意識をもつことも非常に大切なのである。なお、咀嚼は脳にもいい刺激を与える。このことも知っておいて損はないだろう。

著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)